岐阜県相戸鉱山の鉱物

岐阜県相戸鉱山の鉱物

1.初めに

加藤・松原・野村先生共著の「鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-」に
「岐阜市北方の接触鉱床とスカルン鉱物」の章があり、その中に、
『美山町相戸(あいど)の山の中腹に、相戸鉱山があり、昭和30年代に5cmに
達する硫砒鉄鉱の庇面式美晶とそれに伴って閃亜鉛鉱の美晶を産したが道が
険しく地元の人の案内がないと・・・・・・・・』とある。
愛知県の石友Kさんが美山町にある関連会社の地元出身の人に相戸鉱山の
位置を事前に調べてくれていたので、簡単に鉱山のズリを探すことができ
閃亜鉛鉱の美晶と庇面式硫砒鉄鉱を採集することができた。
この産地の敵は、ヒルの大群で、初冬か初春の採集が良いでしょう。
(2002年6月採集)

2.産地

美山町相戸の集落の中央にある村社の大きな杉の木の前を左に曲がり
そのまま進むと相戸岳登山道に突き当たる。これを約300m行くと
集落の外れになり、二又があり、ここで車をとめる。
右側の道を行くと、左側奥に別荘風の建物が何棟かあり、やがて杉林の中の
山道になり、伐採作業用の広場がある。(日曜日などで、伐採作業が
休みのときなら、ここまで車を乗り入れられるでしょう。)
約100m山道を行き、沢を渡り、更に約100m行くと右側から沢が
合流している。この沢を登りながらよく見ると、赤茶けた鉱石や方解石を
噛んだズリ石が落ちている。
相戸鉱山ズリの沢
沢を約70m登ると滝があり、今回はここまでしか行きませんでしたが
滝壷には鉱石があり、更に上にもあるかも知れません。
相戸鉱山の滝

3.産状と採集方法

「日本鉱産誌」によれば、相戸鉱山は金華(きんか)鉱山とも
呼ばれたようで、洞戸鉱山と同じように、古生代の粘板岩、砂岩、チャート
石灰岩とこれらを石英斑岩が貫く典型的なスカルン鉱床です。
この本がでた昭和31年には休山中とありますが、それ以前には
閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱、硫砒鉄鉱などを採掘したようです。
この沢にあるズリ石を叩いて、採集しますが、大きな結晶は方解石の
中や方解石に接して産出する傾向があります。
相戸鉱山のズリ【Kさん親子】

4.産出鉱物

(1)硫砒鉄鉱【Arsenopyrite:FeAsS】
もともとは銀白色だが、ズリで表面が錆び、金〜赤茶色の菱餅状で産出する。
へき開面は、銀白色をしている。
硫砒鉄鉱
(2)閃亜鉛鉱【Sphalerite:ZnS】
ここのものは、鉄閃亜鉛鉱とよぶ真っ黒い結晶で、方解石に埋もれていたが、割った
拍子に結晶の何面かが顔をだした美晶を採集できた。
閃亜鉛鉱【硫砒鉄鉱と共生】

5.おわりに

(1)先日、水晶峠で会った滋賀県のOさんが、『あそこは、ヒルがいるから
(行きたくない)・・・』と話していた意味がようやくわかりました。
関東・甲信・東北での鉱物採集で、”ヒル”に喰われた記憶は栃木県の
野州鉱山くらいしかありません。
洞戸鉱山では見かけなかったヒルが相戸鉱山や柿野鉱山には猛烈な数生息し
歩いていくと鎌首(?)をもたげて出迎える姿には、”ゾッ”とします。
尺取虫のように猛烈な勢いで皮膚をめがけて突き進み、喰い付いたら満腹になるまで
離れません。傷口の血は30分くらい止まらず、痛痒さが2、3日続きます。
採集から車に戻ると、服、長靴を脱ぎ、喰い付いているヒルをピンセットで
落としたり、傷の手当で30分くらいかかりました。
この地域の採集は、春先が良いようです。

左:長靴を這い上がるヒル   右:ヒルに喰われた傷口

6.参考文献

1)加藤昭、松原聡、野村松光共著:鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-,築地書館,1982年
2)日本鉱産誌編纂委員会編:日本鉱産誌 T-b(銅・鉛・亜鉛),東京地学協会,昭和31年
inserted by FC2 system