2019年 ミネラル・ウオッチング納め in 長野











         2019年 ミネラル・ウオッチング納め  in 長野

                 ( Year End Mineral Watching in Nagano , 2019 )

1. はじめに

    12月も半ばに差し掛かり、2019年も残すところ2週間だ。数年前までは、この時期になると今年の『ミネラル・
   ウオッチング納め』をどこでやろうか、と思い悩んでいたのだが、この2年ほどは他のことで頭が一杯で、行くこと
   すら思い浮かばなかった。

    「郵趣会」の例会に合わせて甲府に戻ったが、埼玉の妻の母親の介護日程まで間があるので1日暇な日が
   できた。単独行での日帰りミネラル・ウオッチング納めを計画してみた。

    2019年も異常な天候で、あちこちで自然災害が起きた。千葉に住む孫娘の通う小学校の体育館が雨漏り
   で、展示してあった全児童の夏休みの自由研究が濡れて目も当てられない惨状だったと息子のお嫁さんから
   連絡があった。当然孫娘のもダメで、力作を見せてもらうことができなくなってしまった。

    長野県でも洪水被害で住宅が浸水したり、新幹線の車両も水浸しになったりした。これだけ荒れた後ならば
   埋もれていた『焼餅石』が顔を出しているのではないかと思い、探しに行くことにした。

    目的地まで150キロあるかないかなので、自宅を4時過ぎにでて、7時過ぎに着いた。朝のコーヒーを買いに
   コンビニに入り、台風の時の様子などを聞くと、「この辺りは浸水こそしなかったが、上流では橋が流された」、と
   被害が大きかったようだ。

    目的の沢に行くと、落ち葉が多くて探しにくいことこの上ない。それでもいくつか”球顆”を発見して、叩くと
   ”鶯餡(うぐいすあん)「緑簾石」”が入ったマズマズの『焼餅石』が見つかった。
    ただ、沢の石は濁流で流されしまったようで、その後が続かず、早めに切り上げて「黒曜石博物館」へと向か
   った。

    2019年は、恒例のミネラル・ウオッチングも開催出来ず、子ども達を案内して甲武信鉱山の「貯鉱場」に
   行ったくらいで、ハンマーの使い方を忘れていたが、叩いているうちに思い出した。
   ( 2019年11月 体験)

2. 産地と産状

    草下さんの「鉱物採集フィールドガイド」などにも記述されている有名産地です。

    枝沢に入り上流に詰めて行きながら、鶏卵からラグビーボール状の丸みを帯びた転石を探します。台風の
   影響なのか枝沢にはたくさんの落ち葉があって探しにくい状態だった。
    また、沢の脇の崖が崩れている箇所もあり、台風19号の被害の大きさを教えてくれた。

     
             落ち葉が一杯の枝沢                      崖崩れ

3. 採集方法

  ここでも、”乞食の眼”でひたすらそれらしい丸みを帯びた転石を探します。ご存知のように、河原の石は
 ほとんどが丸みを帯びているので、その中から見つけるには晶洞がありそうな石の特徴を把握しておくことが大事
 です。

    @ 色は白っぽい。薄い灰色〜薄い黄緑色を帯びていることもある。
    A 持ってみると見かけより重い。
(中が空洞なのに)
    B 表面が凝灰岩や流紋岩のような感じでざらざら。(スベスベしていない)
    C 大きさは鶏卵大〜ラグビーボール大(これより小さいのは採っても標本としては・・・・・)

    それらしい石をみつけたら、堅い台石の上に置いてハンマーでたたき割る。2.5キロくらいの重いハンマーで
   ないと歯が立ちません。球顆は割れないのに、台にしている石の方が砕けてしまうことも度々だ。

        
                 2つに割れた                       3つに割れた

    できれば”真っ二つ”に割って”貝合わせ”のようにピッタリ合う形で標本を作りたいのだが、質の良い肉厚の
   薄いものほど”粉々に”砕ける確率が高いのだ。そのような場合、自宅に持ち帰って「ダイヤモンドカッター」で
   切れ目を入れてから、タガネで割る方法をお薦めする。

   【番外編】
    1) 球顆の片側にだけダイアモンドカッターで切れ目を入れる。
       人工の手が入っていると嫌う人もいるので、反対側から見ると自然な割れ目だけが見え、標本価値を
       損ねるのを最小限にできる。
       ダイヤモンドカッターの先端が晶洞にかかる手前で止める、いわゆる”寸止め”もポイントの一つだ。
    2) 平タガネを切れ目に入れて、ハンマーで叩いて真っ二つに割る。

        
                切れ目を入れる                      タガネで割る

     
                真っ二つに割れた
        (2つの中央から見るとカッターの痕が見えない)

4. 観察標本

 1) 焼餅石【緑簾石などを含む球顆/Geode with EPIDOTE:Ca2Fe3+Al2(Si2O7)(SiO4)O(OH)】
         外観は球顆状で、内部の晶洞の中に黄緑色〜緑黒色の細柱状〜針状の緑簾石結晶が族生している。
    緑簾石の代りに水晶の場合もある。また、黄鉄鉱のが酸化した「武石」などを伴う場合もある。

     
                     「焼餅石」
                【ウグイス餡(緑簾石)入り】
                    (餡チョッピリ)

5.おわりに

 (1) 産地近くに「武石公園(たけしこうえん)」がある。今回初めて入口まで行って見た。そこには、「武石」に
    ついて解説してくれる案内板が建っていた。それによると、この公園の尾根でも「武石」が観察できるという。

        
                 「武石公園」                     「武石」案内板

     振り返って見ると、数年前のミネラル・ウオッチングで皆さんと訪れた武石産地の巨大露頭が見え、ここで
    観察するまでもないと思った。

     
                  「武石」産地遠望

 (2) 「2019年ミネラル・ウオッチング納め」
      2019年はミネラル・ウオッチングに行こうと思っても、妻の入院・手術・療養で妻の母親の介護を一手に
     引き受けることになり、行けない状態が続いている。

      年末近くになって、K兄弟との”晶洞開け”、そしてこの”採集納め”と、ミネラル・ウオッチングの真似事が
     できるようになってきている。

      今日から池袋で「ミネラル・ショー2019」が始まるので、何も買う予定はないが、日本産の希少な鉱物、
     外国産の美しい結晶鉱物などを見て、気分転換して来るつもりだ。

6.参考文献

 1) 草下英明:鉱物採集フィールド・ガイド,草思社、1988年








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