2014年 東京国際ミネラル・フェア<BR> 27th Tokyo International Mineral Fair










          2014年 東京国際ミネラル・フェア
         27th Tokyo International Mineral Fair

1. はじめに

    東京では、国際的なミネラルショーが6月、12月の年2回開催される。それぞれ、開催地にちなん
   で、「新宿ショー」、「池袋ショー」と呼ばれている。

    2014年6月、千葉に住む三男家族に会いに行き、「ミネラル・マーケット2014」を見た後に、訪れ
   てみた。

    国産鉱物標本がありそうなのは、「Ms.Hの店」、「真鍋鉱物研究所」、「益富地学会館」、「大江
   理工社」、「クリスタルワールド」、「小室宝飾」、そして「鉱物同志会」など限られたブースだけだっ
   た。
    数年前から感じていたことだが、国産鉱物を入手する売り立てとしては、このフェアに合わせて
   飯田橋で開催される「ミネラル・マーケット」に比べ、蔭が薄くなってきているのは否めない。
    最近では、国産標本の良い品が少なくなり、置いてあっても数万〜数十万では手が出ない。

    そんなところから、「新宿ショー」は、国内ではお目にかかれない美しくて大きな結晶や国内では
   産出しない珍しい鉱物を見たり、廉く購入したりする場だと割り切った。
    そのような眼で見て回ると、『中国産両錐珪灰鉄鉱』、『アフガニスタン産柱石頭付き結晶』、そ
   して『アルプス産水晶のドフィーネ式双晶(右、左)』、などがあり、1つ1,000円前後で購入した。
    ( 2014年6月 訪問 )

2. 場所と規模

 名  称  場  所
(最寄り駅)
出店数  入場料  内  容   備  考
第27回東京国際
ミネラルフェア
ハイアット
リージェンシー
東京
(JR 新宿)
国内 77
(前年比+2)
海外 78
(前年比+1)
スペースが限られ
大幅増はないようだ。
5日間通し券1,000円
シルバー(65歳以上)は
学生と同じで、700円
業者による販売
鉱物、化石、ジェム
ジェムが多い
 金曜日〜火曜日
 (5日間開催)

          
               ミネラルフェア会場                         入場券
                   【2014年】                          【2014年】

3. 購入標本

    何だかんだ、と理由をつけてミネラル・ショーなどで購入するのは、次のような品だ。

     (1) 古い国産標本
          日本で採集された鉱物標本で、海外からの里帰り品が多い。
     (2) 特に、山梨県(甲斐國)産鉱物
          自分が住んでいる山梨県産鉱物
     (3) ミーハー品
          強いて産地まで行って採集しようとは思わないが、話題の産地・鉱物なので1つ
         くらい持っていようか、という品
     (4) 外国産標本
          日本では入手できない美しく大きな結晶や稀産鉱物
     (5) 鉱物関連グッズ
          鉱物(金属)に関する、切手、コイン、書籍(本)など

 3.1 古い国産標本
      国産品を置いてあるブースを重点に回ってみても、古い国産標本は少ない。里帰り品がある
     かと期待しているのだが、この数年、欲しいものは全くない。
      ( 「市ノ川の輝安鉱」や「乙女鉱山の日本式双晶」などは見かけるが、すでに持っているし、
        値段も私が買ったときよりも、ゼロが1つか2つ余計についている。  )

      「クリスタル・ワールド」のブースに立ち寄ると、「池袋のミネラルショーには「○○標本」を含む
     国産標本を持ってきます」、と慰めてくれたが、何年か前からブース脇の通路が使えなくなり、
     ”お店を広げられるか”、微妙だ。
      古い国産標本は、納まるところに収まってしまい、出てくるチャンスは極めて少なくなっってい
     るようだ。

 3.2 山梨県(甲斐國)産鉱物
      「自分が住んでいる山梨県産鉱物には一入(ひとしお)愛着がある。昔、山梨県で産出した
     ものを少しでも買い戻しておきたいと思っている。
      そんな訳で、過去に購入したことがある鉱物種でも、「これは!」、と思う標本は乏しい財布
     の許す限り購入するようにしている。
      国産標本そのものが少ないのだから、山梨県産標本で欲しいものはあるわけがなかった。

 3.3 ミーハー品
      強いて採集のため産地まで行こうとは思わないが、話題の産地・鉱物なので1つくらい
     持っていようか、という程度の品。
      欲しいものがなく、今回もパス。

 3.4 外国産標本

  (1) 「アフガニスタン・パラミールの柱石」
       ミネラル・ウオッチングで訪れることが多い長野県川上村では各種の柱石が採集でき、10年
      近い昔の2005年に訪れたときの模様を次のページに掲載した。

       ・ 長野県川上村の柱石
        ( Scapolite from Kawakami Village , Nagano Pref. )

       「鉱物採集フィールドガイド」に載っている川上村川端下(かわはけ)のものは、草下先生
      自身が、「”白雲母”(ピニ雲母?)化しているものも多い」、も書いておられるように、風化分
      解しているものだが、かなり離れた露頭で”ピカピカ”の柱石が採集できた。しかし、頭付きの
      標本は眼にしたことがなかった。

       とあるブースを見ていると、ピンク色をした「柱石」があった。大きさ(重さ)によって値段が
      違う”宝石”並みの取り扱いだ。頭付きで、色が濃く、なるたけ廉いものを50本ほどの中から
      選んだのが下の一点だ。

       
        アフガニスタン産・「柱石」
            【長さ 15mm】

  (2) 「中国産珪灰鉄鉱」
       2013年は、長野県の古い鉱山跡で日本離れした大きな「珪灰鉄鉱」を採集した。その模様
      は次のページに載せておいた。

       ・ 長野県○○○○鉱山の「珪灰鉄鉱」
        ( ILVAITE from **** Mine , Nagano Pref. )

       とあるブースに、「珪灰鉄鉱」が2、30本箱に入れて置いてあった。手にとって見ると、長さ
      が4〜5cm、直径が1.5〜2cm、ほとんどが頭付きで中には”両錐”のものがある。結晶面もピ
      カピカで、申し分のない「珪灰鉄鉱」標本だ。値段も市価の1/3〜1/5と廉い。両方ハッキリし
      た両錐4本、片方がルーズな両錐2本と頭付き1本、合計7本をまとめて、○千円で購入した。

       
              中国産・両錐「珪灰鉄鉱」
                【長さ 40〜45mm】

       両錐でピカピカの結晶の「珪灰鉄鉱」があるとは、”世の中、ある所にはあるもんだ”。

       【後日談】
         この中国産と同じくらいの大きさで頭付き長野県産「珪灰鉄鉱」をペアにして、恒例の
        『月遅れGWミネラル・ウオッチング』のオークションに出品したところ、兵庫県・N夫妻が落
        札してくれた。

         なお、長野県の「珪灰鉄鉱」産地は、”立ち入り禁止”になった、と風の便りで聞いた。

  (3) 「アルプス産水晶のドフィーネ式双晶」
       案内はがきをいただいていたクリスタル・ワールドのブースを訪れると、国産標本はほとん
      どなく、数多くの標本を見回すとアルプス産の水晶が置いてあった。2つのカゴの右側には
      「右水晶」、左側には「左水晶」が入っているので、「混ぜないでくだい」、と注意書きもある。
       暇にあかせて、1本、1本、チェックしてみた。右左を取り違えているものは正しいカゴに戻し、
      「ドフィーネ式双晶」があれば別にした。その結果が下の写真だ。

       
               アルプス産「右・左水晶」

       写真では左水晶のほうが少ないように見えるかも知れないが、右、左水晶の発生率は同じ
      くらいだ。ドフィーネ式右、左双晶はどちらも4本あり、同じだ。これも何かの縁と思い、ドフィー
      ネ式双晶を左右各1本購入した。

       
           左         右
        アルプス産「ドフィーネ式双晶」

       店主曰く、「アルプスの水晶は、左右はっきり分かるものが多いです。標高が高い産地の
      水晶ははっきりしやすいのでしょうかネ。・・・・・・・でも、山崎山(滋賀県琵琶湖の近く)は、
      低い産地ですね。・・・・・・」
       以前、標高が高い産地の山梨県乙女鉱山と長野県川端下の水晶の双晶について、調べ
      た結果を次のページに掲載した。乙女鉱山の水晶の80%は左右が外観で区別できるが、
      川端下産は全く区別できなかった。乙女鉱山の左右水晶はほぼ同じ比率だった。

      ・ 山梨県乙女鉱山の水晶双晶あれこれ
       ( Quartz Twin a la carte of Otome Mine , Yamanashi Pref. )

 3.5 鉱物関連グッズ
      鉱物に関連するグッズの代表は書籍(本)、切手、コインだ。

  (1) 書籍(本)
       鉱物関する本は毎月のように発行されている。インターネットで注文すれば、2日後には
      送料無料で地方に住む自宅に届く。
       ただ、パソコンの画面では中身を確認できないため、”○○先生監修”、などの甘言に釣ら
      れて買って失望したことが何度かあり、立ち読みして内容を確認するのが目的だった。

       過去に出版された本と『同工異曲』か『異工同曲』が多く、これもパスだった。

  (2) 切手
       前の日の「ミネラル・マーケット」では切手を見かけたのだが、この会場ではほとんど眼に
      することはなかった。

  (3) コイン
       この会場では、ローマ時代の銀貨や銅貨などのアンティーク(骨董品)や近代の記念コイン
      などが販売されていた。
       西洋の貨幣は、圧印(プレス)で作られているのだが、鋳造と思われるもの(偽物の可能
      性大)が並んでいたりして、これもパスだった。

4. 特別展とイベント

 4.1 特別展「シーラカンス」
      新宿ショーの特別展には、「鉱物」と「化石」が隔年(一年交替)で展示され、2014年は「化石」
     の番で、”生きた化石シーラカンス”、だった。
      4億年以上前に誕生したシーラカンスの仲間のほとんどは化石として残っているのが知られ
     ていただけだったが、1938年に南アフリカのイーストロンドンで生きたシーラカンスが発見され
     た。捕獲されたカムルナ川沖と発見者ラティマー氏の名前から、 Latimeria chalumnae 、と名
     づけられた。
      その後、1952年にマダガスカルの北、コモロ諸島発見され、ここでは多数のシーラカンスが
     発見されている、シーラカンスといえばコモロ諸島を思い浮かべる人も多いはずだ。
      アフリカにしか生息しないと思われていたシーラカンスがインドネシアで見つかったのは1997
     年でごく最近のことだ。インドネシアのほぼ中央部にあるスラウエシ島の北部にあるマナドとい
     う町の魚市場で発見された。その後の遺伝子調査で、アフリカのものとは別種であることが判
     り、 Latimeria menadoensis と名づけられた。

       
                  シーラカンスの生息地
           【「東京国際ミネラルフェア」ガイドブックより引用】

      なぜアフリカ東岸とインドネシアにシーラカンスが生き延びているのか。ここにはウェーゲナー
     (1880年−1930年)の「大陸漂移(移動)説」の正しさを照明しているかのようだ。
      今から約1億5000万年前のジュラ紀には、ユーラシア大陸の東端からアフリカ大陸東岸まで
     深い海(図の赤い帯)が広がっていた。約1億年前に深海にすむシーラカンスがいたと思われ
     る。その後、インド亜大陸が北上し、深海は分断され、南アフリカとインドネシアの2種に分化し
     たと考えられる。

       
                       ジュラ紀
       
                        現在
                大陸移動とシーラカンスの分化
           【「東京国際ミネラルフェア」ガイドブックより引用】

      現在では、冷凍保存した標本のCTスキャン画像によって器官の構造や機能が解明され、さ
     らに遠隔操作で動くカメラを搭載した「ROV」(Remotely operated vehicle;遠隔操作無人探査
     機)で泳ぎ方から餌のとり方まで、いろいろな生態が明らかになりつつあるようだ。

       
                1つの洞窟に6個体が生息
          【「東京国際ミネラルフェア」ガイドブックより引用】

      シーラカンスは、水と一緒に餌を吸い込む「吸引摂餌」を行っていて、深海の餌の少ない場所
     では餌を追いかけるのではなく待ち受ける方が効率が良く、白亜紀末の恐竜を始めとする動
     植物の『大量絶滅』を乗り越えられた理由の一つを考えられている。
      「吸引摂餌」をする身近な魚に「鮒(フナ)」がいると知って、次回、鮒を見る見方が変わるか
     も知れない。( 滋賀・Nさん、「鮒ズシ」では、あきまへんで )

 4.2 「ジオード・クラッキング」
      数年前から「池袋ショー」では、「ジオード・クラッキング(英: Geode Cracking )」が人気だ。
     ジオードとは、『晶洞』のことで、同じ英語の「ドゥルーズ( Druse )」も同じような意味だ。”鉱物
     結晶が樹立する岩石の空洞”と英和辞典にはあるが、晶洞の内面に群がって生えている結晶
     の様子を伝えるのには、”樹立”より”林立”あるいは”叢生(簇生):そうせい”の方がふさわし
     いだろう。
      「池袋ショー」でジオードと言っているのは、内部に晶洞を持つ球状の玉髄( Chalcedony )で、
     これを石割り器具を使って人力で割るところから、ジオード・クラッキングと呼ばれている。中か
     ら何が出てくるか、割って見るまでわからないミステリアスなのが人気のもとのようだ。

      「新宿ショー」に「ワンコイン体験コーナー」ができ、「ジオード・クラッキング」が登場したのは
     多分、今回が始めてだと思う。モロッコ産のジオードとのことで、「池袋ショー」のものよりやや
     小ぶりで値段が500円と廉いのが特徴だ。
      券を買って、自分が選んだジオードを1つ割ったもらった。肉厚が薄いので大掛かりな石割り
     器具は不要で、平タガネとハンマーをつかって、あっという間に割ってくれる。
      ( 割ってくれた人の名札に、”Kxxxx Jxxxx ”、とあるので、東京ミネラル協会の理事だと
       今ごろになって気づいた次第だ。 )

          
                  ワンコイン体験券                       平タガネとハンマーで割る

      「池袋ショー」のは晶洞の中には水晶だけでなく、方解石などの炭酸塩鉱物もあるが、ここの
     は透明感の高い水晶だけがビッシリと生えていて、なかなかのものだ。

       
             クラッキング後のジオード
                  【モロッコ産】

5. おわりに

 (1) 新宿ミネラル・フェア
      ここ数年、新宿ミネラル・フェアを訪れるたびに思うのだが、『国産標本』が極めて少なくなって
     いる。
      同じ時期に開かれ、国産鉱物が主体の「ミネラル・マーケット」に比べ、”国産鉱物派”として
     は訪れる魅力が薄れてしまっている。

      この種の、ミネラル・ショーは、世界の鉱物・ジェム・化石などを楽しむ場、と割り切るしか
     なさそうだ。

 (2) 
      ミネラル・ウオッチングの合間に、農園の手入れも欠かすわけにいかない。農業は何といって
     もお天気次第だ。甲府地方の5、6月の気象データを平年・昨年と比較してみた。

 項   目        5   月       6   月
平 年 2013年 2014年 平 年 2013年 2014年
降水量(mm) 86.3 16.0 39.5 122.5 89.5 103.5
気温(℃) 18.3 19.2 19.2 21.9 22.7 22.6
日照時間(時間) 196.3 258.4 279.5 148.9 122.9 155.2

      2013年は、記録的な少雨で、水不足だったが、2014年は平年並みの降水量があり、水遣り
     からは解放された。だが、雨が多すぎると、ツルだけが茂って実が付かない”ツルボケ”も心配
     だし、無農薬農園では何よりも病気が恐ろしい。

      収穫の一番手は、「ニンニク」だ。前の年の秋、いつもの年の2倍くらいの量を一片ずつ植え
     たのが大雪も乗り越えて球根を太らせた。6月初めに晴れの日が続いたので収穫だ。ニンニク
     は肉料理には欠かせないスパイスなので、キッチンの一角に乾燥を兼ねてつるして置き、いつ
     でも使えるようになっている。

       
                 「ニンニク」

      夏のミネラル・ウオッチングに欠かせないのがMH農園のスイカだ。スイカは徒長ツルが多い
     ような気がするが、実はしっかり大きくなっている。受粉(自然に)したのが、6月20日ごとだっ
     たから、40日後の今月末が採りごろだ。来週夏休みに遊びに来る孫娘が収穫体験だ。
      病気に弱いトマトも元気で、先週から収穫期を迎えている。以前のページにも書いたが、
     ”トマトは10段成らせられれば一人前”らしい。今、10段目に到達した。ようやく一人前かな。

          
         夏のミネラル・ウオッチング用「スイカ」                        トマト
                                                      『10段達成!!』

6. 参考文献 

 1) 井尻 正二、湊 正雄:地球の歴史,岩波新書,昭和32年
 2) 松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
 3) 東京ミネラル協会編:第27回 東京国際ミネラルフェア,同協会,2014年
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