ここのところ毎年欠かさずに訪れているが、@ 国産標本を揃えているブースが少なく、A しか
も古い標本はほとんどなく、 B あっても”高い!!”ので、どうしたものか思案するのだが、気が
つくと会場にいた。
去年までは平日は仕事だったが、今年は自由の身の気楽さで、初日の金曜日に訪れた。初日
とあってか、思ったより空いていたが、国産鉱物、とくに古いものを置いてあるブースは押すな押
すなの盛況だった。
今回、訪れた目的は、私が住む山梨県産の古い標本を探すことだったが、「黒平産トパズ」が
16万円では、”年金生活”の身では、見送らざるを得なかった。
国産標本が置いてあるブースを中心に見て回ると、「山梨県金石沢のエシキン石」や絶産と聞く
「喜多平(きたびら)鉱山のコニカルコ石+オリーブ銅鉱」、そして新産らしい「御嵩(みたけ)町の
燐重土ウラン石」などを購入した。
また、今では入手が難しいとされる「能登鉱山の菱面体方解石」があったので、『方解石』に的を
絞っていろいろな産状の標本を探してみた。「宮田又鉱山のアイスランド・スパー」、「神岡鉱山の
陣笠状」と「六角柱状」、そして高田先生の解説書「方解石」などを購入した。その上、偏光現象の
実験用に「偏光板(ポラライザー)」まで買う念の入れようだった。
今年が結婚40周年にあたり、『ルビー婚』、と呼ぶらしいので「ルビーの原石」を買うのも忘れな
い”Mineralhunters”だった。(磨いた宝石は高すぎて・・・・・・・)
こうして、国産標本数点、日本では入手できない外国産鉱物種数点を買って会場を後にした。
( 2013年12月 情報 )
案内ポスター 会場風景
第22回 東京ミネラル・ショー
公式ガイドブックには、国内232(226)社、海外92(87)社、合計324(313)社が出展とあり、
( )内の2012年にくらべ、国内外とも微増だ。
” Mineral Show ”、と銘打っているが、「化石」だけ、あるいは「ジェム(磨き石)」だけのブースも
沢山あり、次のようなものを展示、即売している。
2013年は、2月15日にロシアに落ちた”チェリャビンスク隕石”の影響か、隕石のブースがいつも
より賑(にぎ)わっていた感じだった。
(1) 鉱物
(2) 化石
(3) ジェム(ルース)
(4) 隕石
(5) 文献・図書・切手・古銭(コイン)
入場券(4日間通し 大人800円)
3.1 国産鉱物
やはり国産鉱物の人気は高い。海外出品社のブースでもいわゆる『里帰り品』、と呼ぶ国産
標本を展示・販売している。これらをみると、次の鉱物は日本を代表するものと言えるようだ。
・ 乙女鉱山の日本式双晶
・ 市ノ川鉱山の輝安鉱
・ 福井県赤谷鉱山の自然砒(金平糖)
・ 阿仁鉱山の鼈甲(べっこう)亜鉛(閃亜鉛鉱)
ただ、付いている値札を見ると、値引き交渉で安くするはずだが、それにしても”0”が一つ多い
のでは、と思うほどだ。結局、了解を得て、写真だけ撮らせてもらった。
3.2 ジオード・クラッキング
今年もジオードとよぶ球顆を購入し、割ってもらうコーナーには長い人の列が絶えなかった。
2,000円くらいから3,800円まで、3種類のジオードの中から好きなのを選んで購入し、係員に
渡すと、クラッシャーを使って割ってくれる。何が入っているかは割ってみてのお楽しみなのが
人気が高い秘密のようだ。
瑪瑙(玉髄?)質の球顆の中の空洞(ガマ)には、「紫水晶」や「方解石」などが成長したもの
もあり、周りでみているギャラリーからも”ため息”が聞こえてくる。
3.3 特別企画展示
特別企画展示の内容は、「鉱物」と「化石」が1年交替で変わる。2013年は、「化石」で、テー
マは『ストロマトライト』だ。
『ストロマトライト』、と聞いてもピンと来ない人が多かも知れない。現在、地球の大気のおよそ
1/4は酸素、のこり3/4が窒素で気圧は1気圧だが、今から46億年前の地球が誕生して間も
なくのころ、大気のほとんどが火山が噴出した高圧の二酸化炭素(CO2)ガスだった。
今から27億年位前、暖かく浅い海辺に緑藻(シアノバクテリア)が生まれ、昼間太陽の光を
浴びて酸素を吐き出し、夜は活動を休止し周りの砂粒などを固めることを繰り返していた。これ
が層を作って成長し、石灰岩の塊になったものが『ストロマトライト(Stromatolite)』だ。
学術的に正しいかは別として、酸素を作り続けている緑藻の”生痕化石”、と言えば分かり
やすいかもしれない。
シアノバクテリアが作った酸素は、海水中に溶け込んでいた鉄イオン(Fe2+)を酸化しFe3+
にした後、赤鉄鉱(ヘマタイト)のような酸化鉄として海底に沈殿した。地殻変動でこれらが
地上に現われたものを縞状鉄鉱床(BIF:Banded Iron Formation)、とよび鉄の世界的大鉱床
はこのタイプが多い。
海水中に酸素(O2)をトラップする鉄イオンがなくなると大気中の酸素が増え、その結果、生物に
とって有害な太陽からの紫外線を遮蔽するオゾン(O3)層も作りだした。
こうして、生物が陸上で活動できる環境が整った。このように、われわれは、シアノバクテリア
の恩恵を受けているのだ。
3.1 国産標本
日本を代表する鉱物種として、岡本、桜井両先生が選んだ「日本産鉱物50種+番外」
があり、国産鉱物収集の目標をこれに置き、すでに達成している。
そうなってくると、私の地元の山梨県や隣接する長野県、とりわけ川上村の標本で良いもの
(1) 「山梨県甲府市金石沢のエシキン石」
この産地の「エシキン石」の分離結晶を数年前に買った記憶があるが、煙水晶の表面に
(2) 「喜多平(きたびら)鉱山のコニカルコ石+オリーブ銅鉱」
ともに[M2AsO4(OH)]からなる砒酸塩鉱物だ。関東地方での産地は稀だ。過去のページを
『 ・・・喜多平鉱山は、石灰岩接触交代鉱床で、鉱山が閉山した後も露天掘りの大きな穴
(3) 「能登鉱山の菱面体方解石」
(4) 「御嵩(みたけ)町の燐重土ウラン石」
2013年のミネラル・ウオッチングで何回か皆さんを案内した長野県の古い鉱山跡で産出する
・2013年月遅れGWミネラルウオッチング
しかし、採集できた水晶は、「カクタス水晶」には似ていない気がしたが、名前はそのままに
この日、『アンティーク チョーク水晶』を見ていると、同じように興味を持った女性から、「これ
帰宅後、『アーティチョーク』について、『ウィキペディア(Wikipedia)』で調べてみた。以下、
『 アーティチョーク(Artichoke、Globe artichoke、学名:Cynara scolymus)は、キク科チョウ
蕾(つぼみ)を見ると、棘(とげ?)のようなものが側面から生え、上の写真の水晶に似てい
【後日談】
(2) 『2013年 ミネラル・ウオッチング納め』
新鮮な気持ちで新年を迎えるため、目下、『2013年ミネラル・ウオッチング納め』をどこにしよ
鉱物コレクターの資格審査
( How Many Specimens do you have ? , Qualification of Mineral Collector )
があれば、持ち出された標本の”買い戻し”の積りで買うようにしている。
そういった標本を紹介する。
エシキン石【AESCHYNITE-(Y):(Y,Fe,U,Th)(Ti,Nb,Ta,W)2(O,OH)2】
結晶がついた標本なので購入した。やはり、鉱物標本は『母岩付き』がベストだ。
全体 部分
「山梨県甲府市金石沢のエシキン石」
コニカルコ鉱【CONICHALCITE:CaCu(AsO4)OH】
オリーブ銅鉱【OLIVENITE:Cu2(AsO4)(OH)】
良くよく調べてみると、同じ産地の「コニカルコ石」は、2005年の新宿ショーと2006年8月の
池袋で購入済だった。そのくらい、思い入れが強い鉱物だ。
たぶん、「日本の鉱物」の次の記述が”虎馬”になって、衝動買いしてしまうのかもしれない。
があいていて、そこにはコニカルコ石・オリーブ銅鉱・斜開銅鉱などの珍しい銅の燐酸塩
(正しくは砒酸塩)鉱物が採集できた。その露天掘り跡も、いまではゴミ捨て場となって
埋められてしまい、全く採集不可能 』
オリーブ銅鉱を伴うコニカルコ石
方解石【CALCITE:CaCO3】
能登鉱山は、石川県珠洲市にあり、石膏を掘っていた。菱面体結晶は坑道奥深くの粘土
中から産出する四周完全な結晶だ。
これも、高田氏が「ペグマタイト誌」に載せた採集記を読んで、鉱山がなくなった今では絶対
入手不可能と思い、見つけるたびに購入している。
( 実際、2005年にミネラル・ウオッチングで訪れたが、ズリでは探せなかった )
能登鉱山の菱面体方解石
燐重土ウラン石【URANOCIRCITE:Ba(UO2)2(PO4)2・10-12H2O】
黄褐色、土状母岩に黄白色で1mm以下のガラス光沢の粒状で産出する。ミネラライトの紫
外線を照射すると点々と青白く光るので簡単に認識できる。
放射能は弱く、手製の「ガイガーカウンター」には、反応しない。
太陽光 紫外光
御嵩(みたけ)町の燐重土ウラン石
5. おわりに
(1) 『アンティーク チョーク水晶』 って何??
外国産標本を売っているブースのショーケースを見ると、どこかで見た記憶のある水晶が展
示してあった。ちなみに、価格は20,000円だ。
『アンティーク チョーク水晶』
【内モンゴル産】
水晶にそっくりなのだ。私は、ここでは「カクタス(サボテン)水晶」が採れるとの情報で皆さん
を案内したはずだった。
( Mineral Watching Tour , Jun. 2013 , Nagano Pref. )
しておいた。
は、正しくは、『アーティチョーク』で、そういう名前の野菜に似ているから名づけられたようです」
と教えてくれた。
さらに、「これと同じような国産の水晶をあのあたりで売っていた」、と教えてくれた。ブースを
探し当てると、そこでは、「同じ形態の水晶」や「珪灰鉄鉱」などの国産鉱物を売っていた。値
札には、どちらも一つ3,000円とあり、良い値段だ。
店主に産地を聞くと、「長野県△△△郡の○○山」、だと教えてくれた。古い鉱山の近くだ。
引用する。
センアザミ属の多年草。和名はチョウセンアザミ(朝鮮薊)。
若いつぼみを食用とする(花菜類)。地中海沿岸原産。 』
『アーティチョーク』
【ウィキペディアから引用】
なくもないが、・・・・・・・・・。同じ産地のものが、「カテドラル(西:catedral:大聖堂)水晶」や
「スプレー(英:spray:霧吹き)水晶」などの名でも呼ばれてもいるようだ。
『一物一名』が原則だと思うが、・・・・・・・・。
長野県の古い鉱山跡で採集できた鉱物は「珪灰鉄鉱」に間違いなく、日本離れした大きさ
で、結晶系などを調べている最中だ。
店主から、ここのは、希元素のゲルマニウム(Ge)を含む、と聞き一段と興味が深まった。
2013年も残すところ半月足らずだ。息子たちから、正月休みに家族で帰省するとの連絡が
あったが、それぞれ責任ある立場になったり、新たな家を購入して引っ越したりと忙しいらしく、
全員が一堂に揃うのは難しそうだ。
お嫁さんの巧妙な作戦なのか、幼稚園の年少組に通う孫娘からは、自分で書いた『ほしい
もの(おねだり)』リストが早々(はやばや)と届き、ついつい財布のひもが緩みそうな、ジージ
とバーバだ。
うか、思案中の ” Mineralhunters ” だ。
6. 参考文献
1) 岡本要八郎、桜井欽一:「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査
地学研究Vol.10 No.5,1958年
2) 地団研地学事典編集委員会編:地学事典,平凡社,昭和45年
3) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
4) プラニー商会:第22回 東京ミネラルショー公式ガイドブック,同商会,2013年