2011年12月「第20回東京ミネラルショー」







       2011年12月「第20回東京ミネラルショー」

1. 初めに

    東京では、年に2回、国際的なミネラル・ショーが開催される。それぞれ、開催場所が
   新宿、池袋なので、それを頭につけて、年末に開催されるのを「池袋ショー」とも呼んで
   いる。
    2011年6月、新宿のミネラルショーを訪れた時、国産標本を揃えているブースが少なく、
   しかも古い標本はほとんどなく、12月の「池袋ショー」はどうしたものか思案していた。
    金曜日、出張での仕事が早めに片付いたので、東京・池袋の「サンシャイン文化会館」
   を訪れた。平日にもかかわらず、初日とあって、会場は予想以上に混雑し、何人かの石友
   にもお会いした。

    国産標本が置いてあるブースを中心に見て回るが、『高い!!』。海外からの里帰り品
   に期待してMs.Hのブースを訪れたが、1点もなかった。
    この日は、国産標本数点、日本では入手できない外国産鉱物種数点を買って会場を後
   にし、山梨に戻った。
    翌土曜日、日曜日の出勤に備え、早めに山梨を発ち、東京の切手店に寄った後、再び
   「池袋ショー」をのぞいてみた。
    大江理工社のブースには、国産の古いものから最近のものまで、素晴らしい標本が並ん
   でいた。
    それらの中に、「長野県川上村の偏平電気石完形品」があった。すでに完形品を2つ
   持っているし、値段も良かったので迷ったが、この歳まで元気で働いている『自分への
   ご褒美』
 として購入した。

    その後、私の単身赴任先に来た妻が、件(くだん)の「長野県川上村の偏平電気石完形
   品」を見て、『貴重なんだ』、と一言漏らしただけで、購入金額には目くじらを立てなかった。
    ようやく、良い標本が判るようになったようだ。ここまで10年以上かかったことになる。
    ( 2011年12月 情報 )

2. 場所と規模

    JR池袋駅からサンシャインビルを目指して進み、「東急ハンズ」の脇から一度地下に
   降り、「文化会館」を目指す。2008年から、2Fだけでなく3Fの一部でも販売されるように
   なり、会場のスペースに若干余裕が出たような気がした。

      会場入口

    公式ガイドブックには、国内227(215)社、海外84(86)社、合計311(301)社が出展し
   ( )内の2010年にくらべ、総出展社数は10社増えているが海外の出店は若干減ってい
   る。
    たしか、昨年までは海外出店数は増え続けていたように記憶しているが、記録的な円
   高で、出店料、滞在費そして売上高などを考えると出店を見送る業者が居てもおかしくは
   ないだろう。事実、お客が全く寄りつかず、手持無沙汰にしているブースをいくつか目にし
   ている。
    国内業者の場合は逆で、円高のメリットを生かし、海外で安く買った標本を高く国内で売
   れば、ダブルの儲けとなり、雨後のタケノコのように増える道理だ。

    ” Mineral Show ”、と銘打っているが、「化石」だけ、あるいは「ジェム(磨き石)」だけの
   ブースも沢山あり、次のようなものを展示、即売している。

    (1) 鉱物
    (2) 化石
    (3) ジェム
    (4) 隕石
    (5) 文献・図書・切手・古銭

3. 購入標本

    数年前から自宅の標本収納スペースや『そんなに買ってどうするの?』、という妻の声
   が耳元から聞こえるような気がして、『一点豪華主義』に転じた筈だが、良い標本、珍しい
   産状、国内では得難い結晶などに出あうとついついサイフの紐が緩くなってしまう。
    今回は、何だかんだと理由を付け、国内外産の標本をいくつか買ってしまった。

 3.1 国産標本
      日本を代表する鉱物種として、岡本、桜井両先生が選んだ「日本産鉱物50種+番外」
     があり、国産鉱物収集の目標をこれに置き、すでに達成している。

    ・「あなたはおもちですか?」
     鉱物コレクターの資格審査
     ( How Many Specimens do you have ? , Qualification of Mineral Collector )

      そうなってくると、私の地元の山梨県や隣接する長野県、とりわけ川上村の標本で
     良いものがあれば、持ち出された標本の”買い戻し”の積りで買うようにしている。
      そういった標本を紹介する。

  (1) 「長野県川上村産偏平電気石」
       この産地の電気石は、草下先生の「鉱物採集フィールドガイド」に『赤面(顔)山(あ
      かずらやま)の電気石』、と紹介されているが、もともとパリ万博に出品された鉱物に
      加えられたことから有名になったものだ。

       2011年秋のミネラル・ウオッチングでここを訪れ、運の良い数名が”カケラ”を採集でき
      ただけで、”希産”なことは間違いない。

       ・2011年 秋のミネラルウオッチング
         ( Mineral Watching Tour Fall 2011 , Kawakami Village , Nagano Pref. )

       湯沼鉱泉社長によれば、『完形品』を持っているのは、国内(=世界)でも限られた
      人らしい。こうなれば、すでに2ケの『完形品』を持っているが、ついでにもう一つ、と
      買ってしまった次第だ。

        偏平電気石【長野県川上村産】

  (2) 「三井大高鉱山のミアジル鉱」
       国産の「ミアジル鉱」と言えば、この鉱山の専売品のようで、過去にも”カケラ”を買
      ってはいたが、この標本は、結晶形がハッキリし、価格も安かったので購入した。

        「ミアジル鉱」【三井大高鉱山産】

  (3) 「苗木産ジルコン」
       『希元素鉱物』大好き人間の私として、苗木のものは一通り揃えて置きたいと思い
      購入。

        「ジルコン」【中津川市苗木産】

  (4) 「高知県産ストロンチアン石」
       『希元素鉱物』のストロンチウム(Sr)を含む純白の針状結晶が気に入って購入。

        「ストロンチアン石」【高知県佐川産】

 3.2 外国産標本
      日本国内では採集出来ない結晶や見かけない産状の標本を数点購入した。

  (1) 「サン ベニト鉱山のベニト石」
       草下先生の「鉱物採集フィールドガイド」の橋立ひすい峡の項に、「ベニト石」の話
      があり、調べてみるとアメリカ・カルフォルニア州サン ベニト鉱山にちなむネーミング
      と知った。
       原産地標本で、結晶形をしており、驚くほど安かったので購入。

        「ベニト石」【サン ベニト鉱山産】

  (2) 「アルプス産水晶」
       アルプス産水晶を題材にしたページを5年以上前にまとめたことがあった。NHK教育
      テレビの「日曜美術館」でみた「水晶」がキッカケでこのページをまとめたのだが、この
      番組のゲストのケーニッヒ女史が「スイスの人々は、水晶を Mountain Crystal(山の
      結晶)と呼んで、なじみ深いものである」と述べていた。

     ・アルプスの水晶 「フルリーナと山の鳥」
      ( " FLURINA UND DAS WILDVOEGLEIN "  Rock Crystal from Alps , Switzerland )

      これ以来、アルプス産の水晶を手に入れたいと思っていたが小さな群晶が1万円以
     上もするなどで、なかなか買えなかった。今回、透明〜煙、左右水晶と明確にわかる
     ものなど数本購入した。

        「水晶」【アルプス産】

  (3) 「メキシコ産ダンブリ石」
       国内でダンブリ石の良結晶の採集は困難、と思い外国産を購入。

        「ダンブリ石」【メキシコ産】

4. おわりに

 (1) 第20回ミネラルショー
      池袋ショーは今回で20回を迎え、3階の会場の一角に過去のポスターやパンフレット
     などが展示してあった。

          
                             歴代のポスター

      1993年5月、「インターナショナル ストーン フェア」として開催したのが最初で、同じ
     年の12月「国際鉱物化石ショー」と改称し開催し、12月開催が定着した。
      2004年、「東京ミネラルショー」、と改称し現在に至っている。

      私がこのショーを訪れ、HPに取り上げたのは、2002年が初めてで、それ以来、欠か
     さず訪れている。

      何ごとにも”功罪”両面があるが、一般の人、特に女性にとって近づきにくい鉱物を
     宝石鉱物(ジェム)を通して身近な対象とし、できれば自分の手で採集してみたい、と
     いう気にさせた功は大きい。
      一方、欲しいと言う人がいれば、売ろうという人が出るのは自然の成り行きで、”売る
     ために採る”輩が増え、産地荒廃に拍車がかかったのも事実だろう。

5. 参考文献 

 1) 岡本要八郎、桜井欽一:「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査
                   地学研究Vol.10 No.5,1958年
 2) 益富 寿之助:水晶 やさしい鉱物学,保育社,昭和60年
 3) 草下 英明:鉱物採集フィールドガイド,草思社,1998年
 4) 松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
 5) プラニー商会:第20回 東京ミネラルショー公式ガイドブック,同商会,2011年
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