2009年6月、「新宿ショー」が開催される週末、東京近郊にある妻の実家と長男の家に
行く用事があり、「東京飯田橋の「ミネラル・マーケット」と新宿の「ミネラルフェア」を訪れた。
「ミネラルフェア」は初日の金曜日と終盤近い月曜日の2回も行ってしまった。
( どちらが本当の用事だったか??・・・・・・蔭の声 )
国産標本をおいてあるブースは「クリスタルワールド」、「Ms.Hの店」、「真鍋鉱物研究所」
「ノーベル社」、「益富地学会館」そして「大江理工社」などいくつかに限られている上、
「市ノ川の輝安鉱」には、50万円を超える値段がついていて、とても手がでなかった。
( 既に持っているので買う気もないが )
今回、次のような観点で、各ブースを丹念に探すと、面白い標本があり、しかも価格は
高くなく、いわゆる『掘り出し物』だと思い、数点購入した。
@ 石友への贈呈品・・・・・「千葉富山産トベルモリ石」「富山亀ケ谷鉱山産 水亜鉛土」
「竹森産すすき入り水晶」「マダガスカル産紫水晶」
A 比較標本・・・・・・・・・・・「ブラジル産紫水晶」
B 格安標本・・・・・・・・・・・「南アフリカ産ダイヤモンド」
「マダガスカル産紫水晶」は、購入した時点では単なる「松茸水晶」だと思い込んでいた。
帰宅して根元にある水晶を見ると双晶をなしていることが分かり、833円で買ったものが
『瓢箪から駒』だった。
今回の特別展は、「世界・日本の偉人・・・・鉱物との意外な関係」で、ゲーテやモーツァルト
などが鉱物名に名を残しているのは知っていたが、「ナポレオン岩」があることなど初めて
知った。
国際的なミネラル・ショーのもう1つの楽しみは、外国の人々と情報を交換できることこと
だ。
@ Ms.Hとは、同い年の”戌(いぬ)”だと知った。
A Petrov Rare Minerals のオーナーが甲武信鉱山を訪れたいというので、湯沼鉱泉
社長の住所を教え、湯沼鉱泉に宿泊し、案内する約束をした。
B ブラジルMultigemas LtdaのMr.Fredericoとの話で、”尾籠(びろう)”な話に、一応の
決着がついた。
「ミネラル・マーケット」では新産鉱物や新産地の鉱物そして古典的な産地の国産標本の
良いものには馬鹿高い値がついているのも稀ではないが、「ミネラルフェア」に出品している
古くからの「標本商」の店先にはひっそりと私が買うのを待っている格安な標本があり、
V/P(ブイ・パー・ピー)に満足して帰途についた。
( 2009年6月 現金採集 )
名 称 | 場 所 (最寄り駅) | 出店数 | 入場料 | 内 容 | 備 考 | 第22回東京国際 ミネラルフェア | ハイアット リージェンシー 東京 (JR新宿) | 約150 国内:国外=50:50 |
通し券1,000円 昨年2,000円だった |
業者による販売 鉱物、化石、ジェム ジェムが多い | 金曜日〜火曜日 (5日間開催) |
鉱 物 名 (英語名) | 産 地 | 説 明 | 写 真 | 贈 呈 者 | 備 考 | 水亜鉛土 (HYDROZINCITE) | 富山亀ケ谷鉱山 (かめがい) |
「日本鉱産誌」に よれば、 亀ケ谷鉱山は 笹尾鉱山とも 呼ばれ、三井金属 鉱山が大正〜昭和 初期に「閃亜鉛鉱」 などを採掘した ようだ。 |
水亜鉛土
|
石川・Yさん
Yさんは、亀ケ谷 |
ラベルのほうに 価値があるかも?
近日中に郵送 |
トベルモリ石 (TOBERMORITE) | 千葉県富山町 |
当時、国内 唯一の産地 |
トベルモリ石
|
長野・小Yさん
「日本の鉱物」 |
これも、ラベルの ほうに価値がある かも?
RITEと綴るべき
次回、お会いするとき |
すすき入り水晶 (QUARTZ including DRAVITE) | 山梨県竹森 |
苦土電気石や 雲母などを含む水晶 【現在 採集禁止】 |
すすき入り水晶 |
東京・Kさん
2009年2月末に |
要らない 余分な石は ないので今回 買った。
近日中にKさんに
当然、お金は |
紫水晶/石英 (Amethyst /QUARTZ) | マダガスカル |
先端は松茸に なっている
根元のL字の |
紫・松茸水晶 |
湯沼・お姐さん
「奈留島の双晶」を |
月遅れGWミネラル ウオッチングのとき お渡しし、喜んでいた だけたようだ |
3.2 比較標本
月曜日、2回目に訪れたとき、クリスタル・ワールドのブースにブラジル産水晶の群晶
が10ケほど山積みになっていた。その中の1つを見ると、”煙かかった”ような雰囲気で
明るいランプの下でよく見ると『紫水晶』だった。
ブラジル産の紫水晶といえば、”柱面がなく錐面だけで、どぎつい濃い紫色”というのが
通り相場だが、この1つは錐面〜柱面まで一様に”上品な薄紫色”に染まっている。
山梨県のペグマタイト地帯に見られる「紫水晶」に似ていて、値段を見ると、840円と
安かったので、比較用に購入。
このように、乱雑に山盛になった中から、気に入った標本や面白い標本を見つけると
『掘り出しもの』を見つけたようで、嬉しくなるから不思議だ。
3.3 格安標本
会場を回っていると、ブースのカーテンの下や展示の隅の方に目立たない標本が
目につくことがある。店のオーナーすら「そんなのあったけ?」てな感じで、値段は驚く
ほど安い。それらをいくつか購入した。
鉱 物 名 (英語名) | 産 地 | 写 真 | 備 考 | ダイヤモンド (DIAMOND) | Premier Mine Kimbarly South Africa |
長径 3mm |
ご承知のように 「ダイヤモンド(金剛石)」は 4月の誕生石
国産標本で
ダイヤだけは |
自然銅 (COPPER) | 秋田県 尾去澤鉱山 |
全体
|
樹枝状結晶 葉に相当する部分の 結晶は等軸結晶 特有の形
2007年に購入した |
No | 人 名 (国籍) | 鉱 物 名 ( 岩 石 名 ) 「 書 籍 名」 | 産 地 | 写 真 | 備 考 | 1 | ナポレオン1世 プリンス・ナポレオン (フランス) |
ユージアル石
(ナポレオン岩) |
グリーンランド
コルシカ島 |
略 | 「ユージアル石」 は、ナポレオン3世の 息子・ジョゼフが グリーンランド探検時に 採集したと考えられて いる。 |
2 | ミケランジェロ (イタリア) |
(大理石) |
カララ |
略 | ミケランジェロ自身 大理石の採石夫、運搬工 でもあった。
現在でも、カララの大理石は |
3 | 平賀源内 ( 日本 ) |
「物類品隲(しつ)」 |
江戸 |
略 |
彼の著書・「物類品隲(しつ)」 の中で、金石(金属・岩石)類 117種を紹介している。
「水晶(精)」と「石英」の |
4 | モーツァルト (オーストリア) |
モツァルト石 |
イタリア 愛媛県 |
イタリア・原産地標本
| なぜ、モーツァルトの 名がイタリア産の新鉱物に 献名されたか疑問 ”没後200年の記念の 年に発見”という漠然とした 理由しか見当たらない
モーツァルトが秘密結社 |
5 | ゲーテ ( ドイツ) |
ゲーテ鉱 |
− |
略 |
ゲーテの名は、ごくありふれた 鉱物の1つ、ゲーテ鉱(針鉄鉱) として献名されているのはあまりにも 有名 |
6 | 宮沢 賢治 ( 日本 ) |
オパール |
− |
略 |
幼少の頃”石っこ賢さん”と 呼ばれた宮沢賢治は鉱物・岩石を 採集するだけでなく、自分の作品の 中に「オパール」はじめ各種の鉱物 を登場させている。
一時、鉱物標本商になることを |
7 | 柿本人麻呂 ( 日本 ) |
自然砒 |
群馬県 |
略 |
人麻呂は、天皇家内の 勢力争いに破れ刑死したと される。 群馬県下にある 人麻呂神社の近くに 坑道が残されていて、 自然砒の鉱脈がある。 人麻呂が、猛毒の砒素を 取り扱う立場にあった。 |
8 | 僧 行基 ( 日本 ) |
水晶 |
岩手県 玉山金山 |
略 |
玉山金山は 天平年間、僧 行基に よって発見されたと 伝えられ、僧が腰掛けて 休憩した「行基菩薩 腰掛岩」が 残っている。 |
9 | 和田 維四郎 ( 日本 ) |
魚眼石 |
新潟県 間瀬 |
魚眼石 |
和田がドイツの大学に 寄贈した鉱物標本の1つの 魚眼石 里帰り品 |
10 | ペリー (アメリカ ) |
黄鉄鉱 |
東京都 小笠原島 |
略 |
ペリーは幕末1853年 日本に開国を迫った。 一行は、小笠原諸島に向かい 鉱物資源の調査を行い 黄鉄鉱を発見した。 明治時代、この黄鉄鉱は 海外に輸出された。
現在、立ち入り禁止 |
(1) 国際的なミネラル・ショーのもう1つの楽しみは、外国の人々と情報を交換できることこと
だ。
@ Ms.Hは、アメリカ人だが、もともとは日本人のようで、日本語でコミュニケーションが
できる。
以前、里帰り品の「市ノ川産輝安鉱」や「秩父鉱山の自然金」などを買ったので、
今回も里帰り品があるか期待していたが、以前からあり既に持っている「荒川鉱山の
三角黄銅鉱」と「ダンビュライト」だけだった。
四方山話をしていて、お互いの年の話になり、同い年の”戌(いぬ)”だと初めて
知った。Ms.Hは、「雰囲気でわかるのよネ」とのことだった。(相性が合うのだろう)
A Petrov Rare Minerals のオーナーは、里帰り品や希産鉱物を持っているので、必ず
ブースを覗いて見ることにしている。以前、「市ノ川の輝安鉱」を格安で購入できた
ことはHPでも紹介した。
彼が、湯沼の水晶洞を見学し、甲武信鉱山を訪れたいというので、湯沼鉱泉社長の
住所を教え、湯沼鉱泉に宿泊し、案内する約束をした。
B ”尾籠(びろう)”な話
”尾籠”とは、「礼儀を欠くこと」、「けがらわしく、人前で言うのを憚るべきこと」と
辞書にある。現在、後者での使い方が多いようだ。
2003年11月、長野県川上村にある「シオサブ澤源頭」で、水晶のBelowda双晶を
国内で最初に採集したことをHPで報告した。
その後、”Belowda”の日本語読みに幾通りか出ているのが気になっていた。
私の読み方・・・・”ベローダ”
別な読み方・・・・・”ビロウダ”
現地の人がどう発音するかを知りたくて、スペルを書き、ブラジルMultigemas Ltda
私の耳には、”ベローダ”か”ベロゥダ”と聞こえたので、自分なりには”尾籠”な
(2) 「モーツァルト石」
白黒印刷の論文だったこともあり、どのような色なのかも全く分からなかったが
モーツァルトは、秘密結社・フリーメーソンの会員だったらしい。フリーメーソンがどの
そんな折、別な趣味の「郵便切手」の雑誌を見ていると、ルクセンブルクからフリー
切手の説明には、次のようにある。
「 グランド・ロッジはフリーメーソン地区本部のこと。フリーメーソンの象徴「立方体の
・ ルクセンブルクのフリーメーソンの地区本部の結成175周年を記念する切手が
これらも、調べてみると面白そうだが・・・・・
(3) 原典にあたる大切さ”
この中で、尾崎紅葉の「金色夜叉」のなかで、主人公・間(はざま)貫一がお宮を
「ダイヤモンドに眼が眩み・・・・」のくだりがいつ出てくるのか、心待ちにしながら読み
この一事から、”原典に当る大切さ”を再認識し、平賀源内の「物類品隲」も古書店
「水精(晶)」と「石英」を取り違えたのは、貝原(益軒)先生のせいかであるかのよう
( Mineral Hunting Tour in Nov. 2003
Hunting Various Types of Twins at Mt.Ogawa , Nagana Pref. )
この双晶が最初に発見されたBelowdaはブラジルにあり、ポルト
ガル語圏なので、日本人になじみがある”ローマ字読み”すれば
間違いないだろう、と単純に考えた。
(その後、ポルトガル語辞典で確認したが間違いなさそうだった)
2006年4月の「ペグマタイト」誌77号に「小川山のビロウダ双晶」
という報文が掲載されている。
のMr.Fredericoに発音してもらった。
話には、決着がついた、と思っている。
2006年1月、鉱物同志会の新年会で堀会長から「モーツァルト石」の話があって間
もなく、千葉県の石友・Mさんから原論文を恵送していただき、モーツァルト石について
翻訳したものをHPに掲載した。
( Mozartite , Italy )
今回、原産地の標本を間近にみることができた。
しかし、どこが「モーツァルト石」なのか??
ような目的、会員の構成で、どのような活動をしていたのか(しているのか)、私には
解りかねる。
( ダビンチコードにも出てきたような気がするが・・・・・ )
メーソンに関する記念切手が1978年に発行されていると知り、さっそく購入した。
ルクセンブルクにおけるフリーメーソンのグランド・ロッジ175周年記念
【ルクセンブルク発行 1978年】
切り石」とルクセンブルク市街を描く」
発行されその活動が公認され、「秘密結社」の性格を失っているのか、それとも
切手を発行させる隠然たる力をもっているのか(天の声)?
・ シンボルが「切り石」とあり、フリーメーソンが石切職人の組合から発足した、という
説を裏付けているようだ。
・ この切手は、オーストリア凹版切手彫刻の名匠・ザイデルの若き日の作品
1966年、オーストリア国立印刷局に入局した彼は、1974年以降、ルクセンブルク
切手を担当することになった。 などなど
2009年3月ごろ、和田維四郎著「宝玉誌」についてHPで紹介した。
( Rare Book " Precious Stone " by Tsunasiro Wada )
足蹴する場面があり、「ダイヤモンドに眼が眩み・・・」と貫一が言った、と書いた。
「金色夜叉」はページをペラペラめくった程度で、隅から隅まで読んでいないことに
気付き、古書店で文庫本を買い、読み直してみた。
新聞に連載したところ好評で、話が膨らんだためか、「前編」「中編」「後編」「続金色
夜叉」「続続金色夜叉」「新続金色夜叉」と文庫本で600ページ弱のボリュームがあり、
読み終えるのに半月余りかかった。
進んだが、結局この台詞は出てこない。これは、舞台や映画のために後世脚色された
台詞のようだ。
から取り寄せ、読み進めている。
に源内は書き残しているが、私は違うのでは、と考えている。
これについては、別な機会に報告したい。
6. 参考文献
1) 平賀 国倫編輯:物類品隲(しつ) 日本古典全集,日本古典全集刊行會,昭和3年
2) 日本鉱産誌編纂委員会編:日本鉱産誌(BI-b) 銅・鉛・亜鉛,東京地学協会,昭和31年
3) 浜口 乃二雄、佐野 泰彦編:ポルトガル語小辞典,大学書林,昭和49年
4) 梅原 猛:水底の歌,集英社,1981年
5) 尾崎 紅葉:金色夜叉,新潮文庫,平成16年
6) 松原 聰、宮脇 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年