2007年12月「第16回東京ミネラルショー」

       2007年12月「第16回東京ミネラルショー」

1. 初めに

   東京では、年に2回、国際的なミネラル・ショーが開催される。それぞれ、開催場所が
  新宿、池袋なので、それを頭につけて、年末に開催されるのを「池袋ショー」とも呼んで
  いる。
   2007年6月、「新宿ショー」に顔を出したが欲しいものが全くなく、今回の池袋ショーは
  どうしたものかと迷っていた。
   出品者のC社からいただいた出品リストに面白そうなものがあったのと、石友・Yさん
  から行くならば「輝安鉱」を買ってきて、と頼まれていたので、初日(14日)に訪れた。

   開場30分前に着いたが、平日にもかかわらず、既に100名近くが入場券売り場に並ん
  でおり、招待券を持つ50名余りが入場ゲート前に並んでいた。

     会場風景

   10時の開場と同時にC社のブースに行き、出品リストで眼をつけておいた標本を取り
  あえず片っ端から買い物ケースに入れ、ジックリとルーペで観察し、「行者山のビュー
  ダン石」、「瀬戸田の毒鉄鉱」、「山上鉱山の銅重石華」など9点を購入した。

   会場内を見て回るが、『 これは欲しい!! 』、というものは少ない。いつも懇意に
  してもらっているMさんのところで、「尾小屋鉱山の赤銅鉱」と「津具鉱山の自然金」を
  購入し、KさんのところでYさんに頼まれた「中国産輝安鉱」を購入した。
   以前、里帰り品の良品を買ったMs.Hのブースにも立ち寄ったが、「ダンブリ石」だけで
  食指を動かすような標本はなかった。

   今回の「特別展示は、「中澤晶洞のペグマタイト鉱物」と「益富博士と益富地学会館」
  で、中澤さんも来ておられた。益富地学会館秘蔵の「水晶峠産日本式双晶」は、黒平の
  西山さんから博士が購入されたものだ、と藤原氏からうかがった。
   このブースには、昭和20年の長島乙吉氏はじめ当時の鉱物界の大御所の「研究報告」
  が並んでいたので、7点ほどまとめて購入した。

   ”欲しいモノがない”と言いながら、気がつけば10点あまりの標本を買ってしまってい
  た自分の強欲さには、我ながら呆れている。
  ( 2007年12月情報 )

2. 場所と規模

   JR池袋駅からサンシャインビルを目指して進み、「東急ハンズ」の脇からいちど地下
  に降り、「文化会館」を目指す。毎年12月、ここの2Fで開催される。

   公式ガイドブックには、国内外約210社あまりが名をつらね、約1/4が外国のディラー
  である。
   5年前に比べ、約70社増え、外国ディラーの比率が10ポイント弱下がっている。

   ” Mineral & Fossil Show ”、と銘打っていることからも判るように、「化石」がメインの
  ブースも沢山あり、次のようなものを展示、即売している。

   (1)鉱物
   (2)化石
   (3)ジェム
   (4)隕石
   (5)文献・図書・切手・古銭

3. 購入標本

 3.1 「あなたは、おもちですか?」
    岡本要八郎先生と桜井欽一先生が書いた ”「あなたはおもちですか?」鉱物コレクター
  の資格審査”という記事に目が止まり、その内容について、私のHPで紹介させていた
  だいた。

   ・    「あなたはおもちですか?」
   鉱物コレクターの資格審査
   ( How Many Specimens do you have ? , Qualification of Mineral Collector )

   それ以来、フィールドやミネラルショーでは、日本産鉱物50種+【番外】、計54種を
  積極的に追いかけるようにしている。

   2005年に、岐阜県木積沢で「苗木石」、京都府白川で「褐簾石」の2点を自力で採集し
  2007年2月に秋田荒川鉱山の三角式黄銅鉱結晶をオークションで購入し、49種( 49/54
  =91% )が揃ったが、この先が一段と厳しくなってきた。
    残り5種を求めて、各ブースを丹念に見て回ったが、1つも見つからなかった。

  No 産地 鉱物
 5 秋田県太良 方鉛鉱(八面体と六面体の集形)
 19 徳島県眉山 ルチル
 30 秋田県日三市 荒川石(ベスジェリ石<原文のまま>)
 45 大分県尾平灰鉄輝石(結晶)
【番外】 北海道手稲手稲石

 3.2 購入国産標本

    今回、あれこれ理由をつけて購入した国産標本は、11点だった。

産   地 鉱   物   産     状 価 格  備  考
大分県姫島
(ひめしま)
藍鉄鉱
【VIVIANITE】


      長径 6cm

4,200円
 団球状
産地比較標本
広島県瀬戸田毒鉄鉱
【PHARMACOSIDERITE】


      横 7cm

1,200円
 砒酸塩鉱物
某産地と
比較標本
京都府行者山ビューダン石
【BEUDANTITE】


      横 7cm

840円
 砒酸塩鉱物
某産地と
比較標本
山口県
山上(さんじょう)鉱山
銅重石華
【CUPROTUNGSTITE】


     長径 3cm


      拡大

2,000円
 実物は初見
埼玉県秩父鉱山車骨鉱
【BOURNONITE】


      横 6cm

2,520円
某産地と
比較標本
宮城県
文字(もんじ)鉱山
鶏冠石
【REALGAR】


      横 7cm

1,500円
自然砒を伴う
山口県柳井市石井メタ燐灰ウラン
【META-AUTUNITE】


    白色(太陽)光


   ミネラライト(紫外光)
      横 4.5cm

630円
 以前は、
「燐灰ウラン」と
されていた
兵庫県国崎小路旧坑
(くにさきおうじきゅうこう)
水鉛鉛鉱
【WULFENITE】


      横 6cm

840円
「水鉛鉛鉱」
産地比較標本
滋賀県白石谷水鉛鉛鉱
【WULFENITE】


      横 6cm

840円
「水鉛鉛鉱」
産地比較標本
石川県尾小屋鉱山赤銅鉱
【CUPRITE】


      横 6.5cm

3,000円
 昭和初期の
標本とのこと
愛知県津具鉱山自然金
【GOLD】


     長径 8mm


      拡大

4,500円
 武田信玄
ゆかりの金山

 3.2 購入文献

 文   献   名 著  者 発 行 年 価 格  備  考
研究報告
「明治大正時代の・・・・放射能鉱物研究」
「洞戸鉱山産・魚岩石」
「早池峰鉱山電気石」
「帯江鉱山産・トパズ」
「福岡鉱山・緑柱石鉱床」
「田上地方の晶洞」

粟津秀幸
服部富雄
益富壽之助
桜井欽一
長島乙吉
中司稔
昭和20年
(1945年)
1,400円20年3月〜9月
毎月1冊発行

4. 特別展示

   今回の「特別展示は、「中澤晶洞のペグマタイト鉱物」と「益富博士と益富地学会館」
  だった。

       
          「中澤晶洞」           「益富博士」
                    特別展示

    昭和49年(1974年)、滋賀県・中沢和雄氏によって田上山で、大きな晶洞が発見され
   巨大なトパズはじめ、膨大な量のペグマタイト鉱物が産出した。会場には、重さ6kgの
   トパズやブルートパズなど、それらの中の逸品が展示してあった。
    中澤さんが来ておられ、煙水晶やチンワルド雲母などは即売もされていた。

    益富博士(1901〜1993)は、生涯を通じ、自身の研究だけでなく、地学の普及にも
   力を注がれ、多くの研究者やアマチュアを育てられた。
    昭和48年(1973年)、「日本地学会館」を創設され、現在でも「益富地学会館」として
   土・日・祝日に収蔵標本を公開している。

    今回、益富地学会館の「秘蔵標本」が10点近く公開されていたので、藤原氏から標
   本の説明を聞くことができた。
    私の地元・山梨県の「水晶峠の日本式双晶」は、益富博士の「鉱物」に写真がある
   黒平の西山さんから博士が購入されたものだと藤原氏からうかがった。
    お断りして、そのいくつかを写真に撮らせていただいた。

標本名産地写真  備  考
日本式双晶山梨県水晶峠    
ハート型
日本式双晶滋賀県小ツ組
(こつくみ)

母岩付き・2枚
パイロックスマンガン石愛知県田口鉱山
 
自然砒福井県赤谷鉱山
 
河辺石京都府河辺
 

5. おわりに

 (1)  ”欲しいモノがない”と言いながら、気がつけば10点あまりの標本を買ってしまって
    いた自分の強欲さには、我ながらあきれている。

     今回、買った標本は、2点の「水鉛鉛鉱」のように、2007年に採集した「岐阜県五加
    (ごか)鉱山」、「福井県中竜鉱山仙翁坑」産のものとの比較のためのものがほとんど
    である。【もっともらしい言い訳】

 (2) 2点の「水鉛鉛鉱」は、あえて拡大写真を掲載しなかった。と言うのは、矢印がある
    ものの、どこに「水鉛鉛鉱」が付いているのか、わからないような代物なのである。
     逆に言えば、「五加鉱山」や「仙翁坑」で自力採集した標本がいかに素晴らしいかで
    あろう。

 (3) 2007年も残すところ2週間余りになった。長野の石友・”YYコンビ”と2007年を振り
    返ってみたが、今年は今までになく 『 巨晶・美晶に恵まれた一年 』 だったよう
    な気がする。
     これも、案内・同行いただいた多くの石友のお蔭であり、厚く御礼申し上げる。

6. 参考文献 

 1)岡本要八郎、桜井欽一:「あなたはおもちですか?」鉱物コレクターの資格審査
                  地学研究Vol.10 No.5,1958年
 2)益富 寿之助:水晶 やさしい鉱物学,保育社,昭和60年
 3)山田 滋夫:日本産鉱物五十音配列産地一覧表,クリスタル・ワールド,2004年
 4)松原 聰、宮津 律郎:日本産鉱物型録,東海大学出版会,2006年
 5)プラニー商会:第16回 東京ミネラルショー公式ガイドブック,同商会,2007年
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