ミネラルマーケット・2006

          ミネラルマーケット・2006

1. 初めに

   東京新宿で国際的なミネラル・ショーが開催されるのに合わせ、アマチュアが自分の採集品を
  売る「ミネラルマーケット」が開催される。
   昨年に続いて、3回目の訪問をした。開場を待つ間に、東京の石友・Mさん、Tさん、千葉の石友
  Yさん親子、石川県の石友・Yさんなどとお会いした。
   会場は、昨年と同じで、大勢の人たちが訪れていたが、特に目新しい産地の標本が見当たら
  なかったことと、値段も安くはなかったことなどから、数点の標本と書籍を購入したにとどまった。
   気がついてみれば、愛知県の”オパールの女王”の影響を受けてか、ついつい「緑柱石」に
  眼が行ってしまっていた。
   今回購入したものは、次の通りである。

   @絶産(採集禁止)品・・・・・・・埼玉県秩父鉱山「紐状自然金」
                     岐阜県福岡鉱山産「緑柱石」
   A鉱物関係書籍・・・・・・・・・・・明治17年出版 「金石学教授法」など5冊

      ( 2006年6月採集 )

2. 場所と規模

   2005年からJR飯田橋駅近くの「レインボービル」の会議室が会場になった。10時30分開場と
  あり、混雑を予想して10時前に到着すると、20名ほどが待っている程度であった。
   10時30分キッカリに開場。並んでいた人々がドッ、となだれ込む。10m×30m程度の部屋に
  約20店ほどが、標本を所狭しと並べており、最初は立錐の余地もないほどであったが、30分も
  過ぎるとアチコチに隙間ができてきた。

    会場

   ここで、売られているのは、次のようなものであった。

  (1) アマチュアが自力で採集した国産鉱物や化石
  (2) 外国(中国など)産の鉱物・宝石・化石
  (3) 文献・図書・標本ケースなど

   当然、国産標本のブースが黒山の人だかり、となり、外国産のコーナーは気の毒なくらい
  人気がない。

3. 購入標本

 3.1 「あなたは、おもちですか?」
    「あなたは、おもちですか?」の鉱物50種+番外4種、合わせて54種のうち、持っていないもの
   は、相変わらず7種である。
    各ブースを丹念に見て回ったが、7種は見つからなかった。

 3.2 絶産(採集禁止)国産標本
    今回購入したのは、絶産(採集禁止)国産標本2点のみであった。

   産   地 鉱   物   産     状 価 格  備  考
岐阜県福岡鉱山緑柱石
5個ケース入り
1,500円 水晶の上に成長した
ものもあり
 採集禁止
埼玉県秩父鉱山
大黒坑内
紐状自然金
5個ケース入り
1,000円閃亜鉛鉱の上に成長
抗道は水没
絶産

 3.3 文献・標本ケース
    入口脇で、古い文献を売っていた。明治時代に出版された和綴じ鉱物学(当時は金石学とも
   言った)教科書類を5冊、まとめて、まっ先に購入した。

書 籍 名 著  者 発行年 価 格 備  考
金石学教授法大槻 修二明治17年1,000円古書店では15,000円
博物小学
 金石編
田中 竹次郎編
中川 重麗閲
明治17年500円 
初学礦物編松本 駒次郎編明治17年500円 
初学須知 三
金石学目録
田中 耕造訳明治9年500円須(すべからく)知るべし
必ず知っておくべき
鉱物教科書脇水 鉄五郎大正14年1,000円 

    大槻修二の「金石学教授法」には、明治17年当時として珍しい、カラー写真に似せた標本の
   絵が載っている。彩色した上にニス(にかわ?)のようなものを重ね塗りして、質感を出そうと
   苦心した跡が読み取れる。

     「金石学教授法」カラーページ

4. おわりに

 (1) 訪れたのが今回が3回目であったが、一時ほど購入したいと思う標本が少なくなり、つい
    文献などに手が伸びしてしまった。
    その理由としては
    @ 欲しい標本が少ない。( 「これ以上買ってどうするの」と妻の声 )
    A 欲しいと思う鉱物でも、標本として貧弱な割に値段が高い。
      (特に、採集禁止となった産地標本)

 (2) それでも、「マーケット」には、最近話題の産地などの逸品も並んでいた。アマチュアとは
    言え、その採集ぶりは玄人はだしの方々が多いようである。

 (3) NHK教育テレビの「地球データマップ」を見ていると、”コモンズ(Common's)の悲劇”という話
    が紹介されていた。

    『 あるところに、綺麗な湖があり、魚がたくさん獲れた。ある日、二人の漁師(A,B)が、今まで
     誰も行ったことがない、岩場で、たくさんの魚を獲った。
      この話は、あっという間に漁師の間に、広まり、大勢の漁師が押しかけ、獲れる量は
     みるみる少なくなってしまった。

      A 「 少し、獲る量を減らさないと、ダメじゃないか?」
      B 「 俺たちが獲らなくたって、誰かが獲るのだから、同じことだ。生活もあるし 」
      A 「 それも、そうだ 」

      こうして、その湖では、全く魚が獲れなくなってしまった。

      この例の”魚”のように、皆の共有(コモン)財産では、常に起る”悲劇”とされている 』

      ”魚”のように、繁殖によって増えるものでは、獲るのを制限すれば、獲れる量が回復す
     ることもあるかもしれない。しかし、「日本地方鉱床誌 四国地方」にあるように、”すべての
     鉱物資源は、悠久な自然地質営力の下に生成された自然物であり、一度採掘して消費し
     てしまえば、再新できないものである”
とあるように、この悲劇から逃れる術はあるのだろ
     うか。

5. 参考文献 

 1)大槻 修二:金石学教授法,岡島 真七出版,明治17年
 2)渡辺 武男、沢村 武雄、宮久 三千年編:日本地方鉱床誌 四国地方,朝倉書店
                             昭和59年
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