2006年6月東京国際ミネラル・フェア

         2006年6月東京国際ミネラル・フェア

1. 初めに

   東京では、年に2回、国際的なミネラル・ショーが開催される。その1つである新宿のホテル
  「センチュリーハイアット」で開催された「第19回東京国際ミネラル・フェア【6/2〜6/6】」を
  訪れた。

       
    「センチュリーハイアット」          会場
          2006年第19回東京国際ミネラルフェア

   ミネラル・ショーでは、次のような楽しみがあり、毎回訪れるようにしている。
   今回も、ミネラル・マーケットで合流した石友たちと訪れ、翌日は妻と2人で訪れるなど
  2日間にわたって訪れた。

  (1)国内では、産出しない種類、大きさ、美しさの鉱物を見たり、購入できる。
  (2)国産鉱物の原産地標本や里帰り品を見たり、購入できる。
  (3)外国のディーラと片言の英語で情報交換ができる。
  (4)講演会で新しい知識を仕入れることができる。
  (5)石友と出会って情報や標本の交換ができる。
  (6)文献・切手など鉱物関係資料が入手できる。
 

   今回も、「あなたは、おもちですか?」の鉱物50種+番外を求めてリストを片手に会場内を
  何回か巡回したが現物そのものが見当たらず、国産と外国産の鉱物を何点か購入したに
  止まった。
  ( 2006年6月情報 )

2. 場所と規模

   JR新宿駅から東京都庁を目指して進むと、その西側にホテル「センチュリーハイアット」があり
  毎年この2F,1FとB1Fで開催される。
  案内パンフレットには、内外150社が参加とあり、約半数は外国のディーラです。
   年々お客が増え、今年は初日の平日3日(金曜日)に訪れたのですが、会場内の人気ブースは
  歩くのも容易でないくらいの混雑ぶりであった。
   展示、即売しているものは、次のようなものがあります。

  (1) 鉱物
  (2) 化石
  (3) ジェム
  (4) 隕石
  (5) 文献・図書・切手

3. 購入標本

3.1 「あなたは、おもちですか?」
  「あなたは、おもちですか?」の鉱物50種+番外4種、合わせて54種のうち、持っていないものは
  7種であった。
   今となっては、幻の鉱物と呼ばれ、マーケットで見かけることを期待できないものもあるが
  気長に捜している。
   今回、国産標本を展示しているブースが少ないこともあり、会場では見つけられなかった。

 3.2 国産標本
     国産標本で、”自力採集”をギブアップしたものや山梨県産の鉱物で珍しいもの探している。
    次の4点を購入した。

   産地   鉱物   外観 価格    備考
神奈川県山北町
玄倉(くろくら)
燐灰石  15,000円産地まで片道4時間
長野県大町市湯股魚卵状方解石2,500円幻(?)の産地
富山県立山魚卵状珪石3,800円益富先生の
「鉱物」に記載
岐阜県蛭川村緑柱石8,000円長さ56mm

 3.3 外国産標本
   今回は、妻の好きなザクロ石と希元素鉱物に的を絞って購入することにした。

   産地   鉱物   外観 価格    備考
ロシア
ウラル
灰クロムザクロ石2,000円 
ブラジル
Munic.T.Freitas , Bahia
金緑石4,200円双晶

   @ ロシア産の「灰クロムザクロ石」は、ザクロ石大好きの妻の眼にとまった数少ない
     標本の1つであった。
      最初、2,500円というのを、値引き交渉の末、2,000円になった。ここ(外国)では
     値引き交渉するのが、常識になっています。

   A 2005年6月から、岐阜県苗木地方でパンニングによる希元素鉱物の採集を始め
     「苗木石」「フェルグソン石」などの希元素鉱物や「トパーズ」そして「スターサファイア」
     まで採集できた。
      しかし、「金緑石(クリソベリル)」だけは、採集できていない。それは当たり前で、
     明治のはじめに、”トパーズ勘兵衛”こと高木 勘兵衛翁が採集した1つが、後にも
     先にも、苗木地方で採集された唯一の「金緑石」なのである。
      第一、「金緑石」を他の産地でも採集したこともなければ、ジックリと手元で観察した
     ことすらないことに思い至った。これではならじ、と採集見本用に購入した次第である。
     ( 見本が、立派過ぎて、これと同じようなものは、採集不可能な気もしている・・・・・・)

      また、この購入標本のラベルには、 ”Collection of Eugene E.Foord ” と、前の所
     有者が記載されている。
      Foord(フォード)氏は、アメリカのユタ州ソルトレイクシティにある、地質調査所(本社)
     の所長を務めた人で、フォード石【Foordite:Sn2+(Nb,Ta)2O6】は、氏に献名された
     鉱物であることも教えていただいた。
      氏は2000年頃に亡くなり、その収蔵標本がこうして日本に来ているわけで、縁を感じ
     大切に保管したいと考えている。
      ( フォード石のように、日本国内で産出が確認されていない鉱物種を調べるのには
       後述する、加藤先生の「鉱物種一覧」は非常に便利である )

4.特別展示

   「世界のハイグレード & 古典鉱物標本即売会」 として、各大陸別にその国を代表する逸
  品を展示・即売していた。
   しばし、目の保養をさせていただいたが、付けられている値札の”ゼロ”の数が、予算より
  も2つ、3つ多いものばかりであった。

   KRISTALLE社のWayne C. Leicht氏によれば「日本産鉱物の銘品は次の通りである。
   (  ):私の注記

    『  欧米のミネラルコレクターに日本産の鉱物の銘品について尋ねると、異口同音に
      ・ 愛媛県市ノ川鉱山の輝安鉱巨晶
      ・ 山梨県(乙女鉱山)産の水晶の日本式双晶
      を挙げる。

       世界の鉱物に詳しい、コレクターに質問すると、上の2種のほかに
      ・ 青森県尾太(おっぷ)鉱山の菱マンガン鉱
      ・ 宮崎県(尾平(おびら)鉱山)の斧石とダンブリ石
      ・ 福井県赤谷(あかだに)鉱山の自然砒のボール(俗に”金米糖”)
      ・ 三宅島の灰長石
      ・ 愛知県田口鉱山のパイロクスマンガン石

       新しいところで、
      ・ 岡山県(布賀)の逸見石
      などを挙げる。                                        』

5.文献・資料

      今回購入した鉱物関連の文献は、次の2点であった。

   (1) 加藤 昭:鉱物種一覧,小室宝飾,2005年,3,990円
      2005年9月現在、世界で知られている鉱物種4,246について、その英語名をアルファ
     ベット順に収録し、これに和名・結晶系・化学式・主要物理的諸性質などが添えられて
     いる。
     鉱物名の前にある □は自由記入欄 ■は日本産であることを示す。

      千葉県の石友・Mさんに送っていただいた、「モーツアルト石」の原著論文を和訳する
     ときに、必要性を感じ、今回購入することにした。

   (2) フォッサマグナ・ミュージアム編:よくわかるフォッサマグナとひすい
                          同館,2005年?,2,000円?
       フォッサマグナ・ミュージアムの「展示解説」が絶版になったので、その代わりとなる
      ものを出版した。博物館の2大テーマである「フォッサマグナ」と「ひすい」を重点に
      全面改訂した内容で、美しい数々の写真と読み応えのある文章は、魅力的である。
       「ひすいとの出会い」は、ひすい採集に行く前に必読。また、三島由紀夫の祖父
      平岡 定太郎と蓮華鉱山の関係など、私のHPにある内容も記載されている。

6.おわりに 

 (1) 今回、フォード石の名前を贈られたFoord氏が所有していた「金緑石」を買うことができ
    た。2005年のミネラル・マーケットで購入した南部秀喜氏所有の「高取鉱山産のトパーズ」と
    同じように、所有者の足跡の断片をたどることができるもので、貴重なものだろ考え、大
    切に保管したいと考えている。

 (2) 2006年1月、鉱物同志会恒例の新年会に出席すると、参加者の間で、『費用対効果』に
    ついて話し合っているグループの声が聞くともなしに、耳に届いた。
     一瞬、どこかの企業の会議室にいるのではないか、との錯覚をおこすほどであった。何で
    も、このようなバザーやミネラルショーで遠い産地の良品がそこそこの値段(=費用)で
    買える(=効果)のだから、わざわざ高速代・ガソリン代・宿泊費(=費用)をかけて
    採れると限らない鉱物(=効果)を採集に行くのは考え物だ、と論じている人がいた。

     確かに、鉱物採集の目的を”鉱物を入手すること”に限定すれば、明らかに、ミネラル
    ショーなどで購入した方が、「ブラジル産金緑石」の例を持ち出すまでもなく、少ない
    費用で良品を入手できることは明らかである。

     私たちの「ミネラルウオッチング」に参加する多くの人たちは、”鉱物の入手”以外の
    部分にも大きな価値観を見出しているように感じられます。

7.参考文献 

 1)東京国際ミネラル協会:第19回東京国際ミネラルフェア公式ガイドブック
                 東京国際ミネラル協会,2006年
 2)益富 寿之助:鉱物 -やさしい鉱物学-,保育社,昭和60年
 3)加藤 昭:鉱物種一覧 2005.9 ,小室宝飾,2005年
 4)山田 滋夫:日本産鉱物五十音配列産地一覧表 京都山田コレクション
           クリスタル・ワールド,2004年
 5)フォッサマグナミュージアム編:よくわかるフォッサマグナとひすい,同館,2005年?
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