第27回 名古屋ミネラルショー

        第27回 名古屋ミネラルショー

1. 初めに

  定期購読している「鉱物情報」の巻末に「第27回 名古屋ミネラル・ショー」が開催される
 との予告が掲載されていた。27回を迎える今回まで訪れたことがなかったが、名古屋周辺の
 石友から熱心に誘われたこともあり、初めて訪れた。
  アマチュアが自分の採集品を売るほか、鉱物販売業者の方も多かった。同じような
 ミネラルショーである東京の「ミネラルマーケット」の2倍くらいの規模で、「福岡石の会」
 など、関東〜九州の広い地域から出店があり、地方ならではの標本も数多く出品されていた。
  全体としては、「レインボー柘榴石」「鉛沢、雨塚山の紫水晶」「布賀の逸見石」などを
 出品しているブースが多かったが、いささか”食傷気味”と見え、売れ残ったものも多かった。
  会場では、石川・Yさん、滋賀・Oさん、愛知・KAさん、KDさん、Sさん一家、Iさん、Hさん
 はじめ大勢の石友ともお会いし、情報を交換したり、昼食を共にすることができた。
  また、以前産地情報をメールで差し上げたTさん親子ともお会いすることができ
 私の情報を”利用して”親子で楽しめたとも伺った。
 ( 面識がないのに、あの混雑した会場で、良く私を探せた、と今もって不思議です )
  名古屋ミネラルショーは初めて訪れたが、多くの石友とお会いし、興味深い標本を入手し
 楽しい「現金採集会」となった。

  今回、購入した標本は、次のようなものであった。
  @絶産(採集禁止)品・・・・・・・埼玉県如意と越生の灰クロム柘榴石
                    栃木県文挟「塩素燐灰石」、奈留島の「日本式双晶」
  A山梨県産(買戻し)・・・・・・・増富鉱山の「自然硫黄」、乙女鉱山の「水晶」
  B地方ならではの標本・・・・・・熊本県弁天の「饅頭石」、長崎県村松鉱山の
                    「マンガン白雲母」、福島県熱海町「ぶどう石」
                    山口県佐々並鉱山の「コバルト華」、大分県赤根の「硫砒銅鉱」
                    奈良県御手洗の「灰鉄ザクロ石」など
  C(古典的)著名品・・・・・・・・・三重県白木の「ゾノトラ石」、静岡千葉山の「ダトー石」
                    佐賀県岩野の「ゴンナルド沸石」、群馬県八幡鉱山の
                    「安四面銅鉱」、岐阜県金城鉱山の「銅アダム石」
                    青森県奥戸鉱山の「硫砒銅鉱」、栃木県小来川鉱山の
                    「自然銅」、岐阜県恵比寿鉱山の「トパーズ」
  D採集見本・・・・・・・・・・・・・・・奈良県大峰鉱山の「紫水晶」、三重県橡山の「紫水晶」
                    静岡県河津鉱山の「石膏」、奈良県観音平の「e面つき柘榴石」
  E石友と話題の品・・・・・・・・・山口県志津木鉱山の「アタカマ石」、福島県鬼ケ城の「水晶」

  (2005年8月採集)

2. 場所と規模

  名古屋市千種区吹上にある、名古屋中小企業振興会館(名古屋吹上ホール)の3Fで
 開催された。車で行ったので、会館の駐車場に入れようとしたら新しい車が車高制限(2.1m)に
 引っかかり高速道路の脇(上?)にある駐車場(30分 200円)に入れ、そこから徒歩2、3分で
 あった。

     吹上ホール(駐車場から)
    

  10時開場とあり、混雑を予想して9時過ぎに到着すると、既に20名ほどが列をつくって
 待っていた。やがて、列の後ろのほうにKAさんやSさん一家の姿を見かけ、話し込んで
 いるうちに開場となった。
  Sさんから「愛・地球博」のモンゴル館で購入した「瑪瑙」を恵与いただき、お返しに山梨県産の
 「水晶群晶」を差し上げた。
  先着何名かには、無料配布品があり、妻と私が頂いたのは岡本鉱物標本の「乙女鉱山の
 水晶」であった。(買戻しの手間が少し減った)
  30m×30m程度のホールに、約50店ほどが、標本を所狭しと並べており、開場直後1時間
 くらいは通路を歩くのもままならない程の混雑ぶりであったが、1時間も過ぎるとアチコチに隙間が
 できてきた。
  会場の照明が充分でなく、微細な形状や色が特徴の「岐阜県一柳鉱山産亜砒藍鉄鉱」を
 販売していたがルーペで見ても確証が得られず、値段が高いこともあり、購入を見送った。

     名古屋ミネラルショー【照明が暗く、人物が流れている】
    

  入口脇の事務局のブースには、名古屋鉱物同好会の会員が採集したと思われる”逸品”が
 いくつか展示されていた。山梨県に住む私としては、『水晶の日本式双晶』に興味があり
 了解を得て、写真を撮らせていただいた。
  このほか、「湯沼鉱泉産の緑双晶群晶」などもあったが、入手経路は謎であった。

       
      宮崎県上八重産          奈良県五代松産
                 日本式双晶

   ここで、売られているのは、次のようなものであった。
 (1)アマチュアが自力で採集した国産鉱物や化石
 (2)業者による国産鉱物と外国(中国など)産の鉱物、ジェム
 (3)文献・図書・標本ケースなど

  当然、国産鉱物のブースが黒山の人だかりで、外国標本のコーナーはあまり人気がありません。

3. 購入標本

 3.1 「あなたは、おもちですか?」
  「あなたは、おもちですか?」の鉱物50種+番外4種、合わせて54種のうち、持っていないものは
  7種である。
   各ブースを丹念に見て回ったが、7種は見つからなかった。
  「尾平鉱山の柱状硫砒鉄鉱の集合体」が出ていたが、5万円(7万円?)の値段では、小さなものを
  すでに持っていることもあり、手がだせなかった。

 3.2  購入標本
    今回購入した主な標本は、山梨県産を初めとする次のような標本であった。

    産地    鉱物   産   状 価格      備 考
山梨県増富鉱山自然硫黄300円買戻し
山梨県乙女鉱山水晶(両錐など)1,000円買戻し
埼玉県如意
(にょい)
灰クロム柘榴石
【 正確には
 含クロム
 灰礬柘榴石】
1,500円絶産
埼玉県越生
(おごせ)
灰クロム柘榴石
【 正確には
 含クロム
 灰礬柘榴石】
800円絶産
栃木県文挟
(ふばさみ)
塩素燐灰石
(5ケ袋入り)
500円×2絶産
長崎県奈留島日本式双晶
(3ケ)
1,800円採集禁止(?)
肉厚で、乙女鉱山産と
区別が難しい
熊本県弁天饅頭石
(3ケ)
300円山梨県産との比較用
長崎県村松鉱山マンガン白雲母250円初見
福島県熱海葡萄石100円初見
山口県佐々並鉱山コバルト華250円初見
大分県赤根硫砒銅鉱100円山梨県産との比較用
奈良県御手洗灰鉄ザクロ石200円初見・レインボー(?)
三重県白木ゾノトラ石100円古典的著名品・絶産(?)
「東海地方をたずねて」
 に記載
静岡県千葉山ダトー石100円古典的著名品
「東海地方をたずねて」
 に記載

絶産(?)かとしたが
2Cさんから産地健在との
情報あり

佐賀県岩野ゴンナルド沸石100円古典的著名品・初見
群馬県八幡鉱山安四面銅鉱250円古典的著名品
青森県奥戸鉱山硫砒銅鉱250円山梨県産との比較用
岐阜県金城鉱山銅アダム石300円古典的著名品・初見
栃木県小来川鉱山自然銅250円古典的著名品
岐阜県恵比寿鉱山トパーズ(頭付き3ケ)1,000円古典的著名品
「東海地方をたずねて」
に記載
奈良県大峰鉱山紫水晶400円採集参考品
三重県橡山紫水晶400円採集参考品
静岡県河津鉱山石膏100円採集参考品
奈良県観音平灰鉄ザクロ石
e面つき
【△の面がe面】
250円採集参考品
山口県志津木鉱山アタカマ石300円千葉・Y君の情報品
福島県鬼ケ城水晶250円福島・kさんの情報品

4. おわりに

 (1)27回目を迎える名古屋ミネラルショーを初めて訪れた。”素人ぽい(採集はプロ級?)”ブースが
   多く、興味深い標本(古典的有名産地品)が驚くほどの安値で購入できた。
   ( 標本ケースや箱代も出ないのではないかと、こちらが心配するほど )
    その一方では、カケラのようなレインボー柘榴石を何百ケも並べ”1粒600円”で売るブースが
   あるなど、様々であった。

 (2)目についたのは、レインボー柘榴石、鉛沢や雨塚山の紫水晶、布賀の逸見石など”キレイ系”
   数多くのブースに並んでいた。閉場間際になって半額で売られているものもあったが、売れ残りも
   多かったようだ。
    皆さん、いささか”食傷気味”と見受けられた。

 (3)今回、購入した標本は総額で1万円ほどであったが、「絶産」「初見」「古典的著名品」そして
   「山梨県産」など、興味深い標本を入手できた上に、大勢の石友にも会え、名古屋まで足を
   伸ばした甲斐があった。
    鉱物産地の荒廃が伝えられる昨今、このような「現金採集」が産地を守る1つの手段かとも思う。
    反面、需要があるところに供給ありで、”売ることを目的に採集する輩” が続出し、産地荒廃に
   拍車がかかるのでは、と危惧の念も抱きます。
   難しい問題ですネ。

 (4)ある石友に”注目の標本”を尋ねたところ『貝化石に共生する犬牙状方解石群晶』との答えがあった。
   高いものは3万円近い値段で売られていた。これは、千葉県の某所一帯で産するもので、私の
   中学の後輩で採集会に何回か参加しているNさんのフィールドである(あった)。
    Nさんは、われわれの採集のやり方などを良く知っており、産地荒廃の虞が少ないと判断され
   私が開催する採集会に限り産地を公開しても構わないとのことだったので、4年程前に単独で下見し
   場所・産状・採集標本を確認したが、未だ誰にも公開していない。その時採集した標本のいくつかを
   採集会の「標本玉手箱」に提供したことはあった。
   ( その時の、参加者の反応が今ひとつだったのが、「採集会」を開いていない理由の1つです )
    2、30名の採集会のメンバーで採集するに充分な広さと、標本の量があり、いつか「採集会」を
   開催したいと考えている。
    このように、採集会メンバーも未だ案内していない、無論HP上で公開していない産地がたくさんあり
    ”美しい標本や貴重な標本が採れる知られていない産地は公開しない”ことが、産地荒廃を
   防ぐ有力な手段だと思っている。
    逆にいえば、某紫水晶産地のように、大勢の人が入った後(=公知と判断時)には、HPに
   公開することがありますが、その場合でも、私のHPからは産地が特定できないように配慮している
   積りです。

5. 参考文献

1)第27回名古屋ミネラルショー:鉱物情報No144,鉱物情報編集部,2005年
2)山田滋夫:日本産鉱物五十音配列産地一覧表,クリスタル・ワールド,平成16年
3)加藤 昭、松原 聰、野村 松光:鉱物採集の旅 東海地方をたずねて,築地書館,1983年
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