2001年秋の矢塚の緑簾石

2001年秋の矢塚の緑簾石

1.初めに

福島県塙町矢塚では、透明で自形結晶をした緑簾石が産出する。
ここは、別名、長久木(ながくき)とも呼ばれている産地と同じ場所です。
「日本の鉱物」には、ここで採集した長島乙吉先生遺品の「ベスブ石」が
掲載してあります。
一時は、1日だけで、延べ15名が訪れ、フィーバ状態で、露頭を崩したり、
坑道(?)を掘っての本格的な採集となっていた。
最近の様子が知りたく、日曜出勤を早めに切り上げ、採集に行った。
一時のフィーバー状態は去り、産地は、最近訪れた人も少ないようで、
踏み分け道も定かでなく、胸までの笹薮を掻き分けながら坑道まで到達しました。
台風15号以来誰も来ていないようで、ズリの表面採集で、小さいながら頭付を
10本以上採集した。坑道はその後掘り込まれた様子もなく、ガマを探し当て
3cm級を含め頭付きを採集しました。
(2001年9月採集)

2.産地

茨城県里美村をとおり 国道349号線を北上し、片貝小学校の先で、高萩-塙線にはいる。
片貝小矢塚分校の手前にある桜橋を渡り、約1kmで、左側に矢塚林道(今では、入口に
チエーンが張ってあり通行できない状態)があり、その手前に「矢塚山元第三土場」の看板
がある。この100m先の山の左斜面が産地である。
もう一つは、里美村のはずれで県道22号線に右折し、約6km先の里川に架かる橋の
手前を左折し、約6km行った集落の所を左折し、約1.5km行き右折し、約1kmで
産地です。このコースの方が30分くらい短時間で着けます。
地元の人の話では、昭和20年代から30年代にかけて、珪石を目的に稼行したとのことで、
この近くで何個所も採掘(試掘?)跡がみられます。

3.産状と採集方法

ここは、スカルン鉱床で、緑簾石、灰ばん石榴石や水晶が脈状に胚胎している。
石英や緑簾石の晶洞部分に、頭付きの緑簾石が産する。ガマ粘土は、黒色と黄白色
(山皮?)があり、後者から出るものは結晶面もシャープで、透明感があり、準宝石級である。
新鮮な(?)ズリが残されており、ここで頭付きを採集したという石友も多い。

矢塚のズリ
坑道や露頭での採集は、石英や緑簾石の脈を追い、晶洞を探すが、母岩が比較的柔らかい所
にきていることが多い。(逆に、柘榴石の脈にはないので、ここに突き当たったら、止める
かそこを突き破るかの選択を迫られます。

左:矢塚の露頭       右:矢塚の坑道
今回は、ズリの表面と水平坑道(?)の突き当たりを掘り込んで採集してみました。

4.産出鉱物

(1)緑簾石【Epidote:Ca2(Al,Fe)3(SiO4)3(OH)】
晶洞からでる緑簾石は、大きくてもほとんどが透明感があり、不規則な頭を含めれば、
頭付きは数パーセントの確率で存在する。完全な頭付きで、透明度の良いものは、
1cm前後のサイズである。
希に、水晶の上に、頭付き透明緑簾石が共生するものがあり、美しい。
緑簾石は、水晶が溶けたり、曲がったりするほど高温の熱水(ガス?)の侵入で、真っ黒い
スス状の皮膜に覆われ脱落して、晶洞の底に溜まったのだと想像しています。

頭付き透明緑簾石(2cm)
(2)水晶【Rock Crystal:SiO2】
水晶は、頭付きが少なく、透明度も今一つです。希に、両錐も出ます。
今回、透明感のある平板水晶を採集した。と言うことは、日本式双晶の産出する可能性も
無いとは言えません。

矢塚の平板水晶

5.おわりに 

(1)矢塚が採集禁止になったと聞いていましたが、採集できました。ただ、私が車から
降り、採集に行こうと身支度しているとき、軽トラックで通りかかった地元の人が怪訝そうな
顔をしていました。
地元の方に、迷惑のかからない範囲での採集にしたいものです。
(2)矢塚に行く途中、里美村の田んぼは稲刈りが終わったところもあり、あぜ道に、一面
彼岸花が短い命を咲かせていました。

彼岸花の群生
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