山の尾の鉱物採集禁止

山の尾の鉱物採集禁止

1.初めに

茨城県真壁郡山の尾は、滋賀県田上山、福島県石川町そして岐阜県蛭川村と
並んで、日本有数のペグマタイト鉱物の産地として、有名である(あった)。
日下先生の「鉱物採集フィールドガイド」にも、柘榴石の産地として紹介されている。
私のHPを見た、千葉県の大学院生Kさんを案内して、半年ぶりに訪れた。
山の尾の入り口の採石場の手前で目に入ったのは、「この山地内での鉱物
採集禁止・地主」、「入山禁止・地主」の真新しい看板でした。

立入禁止標識【左:入り口  右:ポンプ小屋脇】
私のHPの「玉川の瑪瑙」採集に続いて、鉱物採集が2回目のK君にとってここで引き
返せとは、余りに酷なので、私たちの採集のやり方では、山を荒らすわけではないので、
許してもらえるであろうと考えて、午前9時過ぎに、入山した。
2号丁場、ベリル坂など主だった場所を説明し、それらの場所で採集を終え、2時過ぎに
もうすぐ帰ろうかとした矢先、3人連れの人たちが現れ、「ここでは、鉱物採集禁止の
標識が見えなかったか、車のナンバーは全部控えた」とえらい剣幕に恐れをなして
早々に退散した。
この標識は、一日前の9月1日に設置したとのこと。
あちこち、禿山になるほど掘り込む人たちがいて、山が崩れる恐れがあるため、
採集禁止にしたとの事でした。
K君にとっては、最初にして最後の山の尾採集となりました。
(2001年9月2日)

2.産地

いまさら産地を説明しても意味がないかも知れませんが、冒頭のように、有名な
産地ですので、今後も産地見学を目的に訪れる方のために説明します。
「鉱物採集フィールドガイド」に紹介されている通りの道をたどる。入り口が分からないと
いう方が多いのですが、「谷田部石材店」前の山道を上って行きます。
2号丁場と呼ぶ採掘跡〜下流にある砂防ダムの間、砂防ダム北側斜面一帯の通称「ベリル坂」
が採集のポイントでした。しかし、範囲は広く、ここ以外でも、かつては良品を採集した人が
いました。

砂防ダム脇でフルイがけするK君

砂防ダムから2号丁場を望む
ベリル坂

3.産状と採集方法

山の尾は、典型的な花崗岩ペグマタイトで、現在でも花崗岩を小規模に採掘している。
かつて陶業用に珪石や長石を掘り出した時に、邪魔者として捨てられたズリの中から、
各種のペグマタイト鉱物や放射性希元素鉱物が採集できた。
露頭や坑道の前のズリ(砂)の表面採集でも柘榴石や緑柱石(アクアマリーン)を発見
できることがあった。
ズリの土砂をフルイ掛けし、残った小石を砂防ダムまで運び、水の中でフルイがけすると
見逃す事なく、採集する事が出来た。

4.産出鉱物

今回、「山の尾の採集収め」にふさわしい、代表的な標本が採集できたと思っています。
(1)緑柱石
かつては、緑柱石の分離結晶で、水色〜緑色がかった、透明のアクアマリーンと呼べる
ものも採集できた。今回は、ベリル坂で不透明な緑柱石を1本採集した。
(2)石榴石
母岩付きで長石についているものは、真紅色で透明度が高く、雲母に埋没している
ものは、大きいのですが不透明で、表面が錆びているものが多い。今回、両方の標本を
採集できた。

左:長石の上のざくろ石 右:雲母に埋没した柘榴石
分離結晶も、24面体で透明感のあるものが採集できた。

24面体ざくろ石 7mm
(3)水晶【Smorky Quartz:SiO2】
ここの石英は、放射性鉱物の影響を受けてか、煙かかっているものが多い。したがって、
水晶も、煙水晶が多い。ぺグマタイトが晶洞性でなく、脈状のせいか、6角柱状の大きな
結晶は少なく、数面が見えるものがほとんどでした。

山の尾産 煙水晶
(4)希元素鉱物
希元素鉱物としては、コルンブ石は比較的採集できるチャンスが多かった。
今回、パンニングまでやってみたのですが、希元素鉱物は、採集できなかった。

5.おわりに 

(1)山の尾は、東京から近いこともあり、鉱物採集をはじめて間もない人や家族連れが、
今まで大勢訪れ、楽しんでいた産地でした。
また一つ、古くからの有名産地が「立ち入り禁止」になってしまい、残念です。
また元のように、採集できる日が来ることを願っています。それには、我々採集する側も
地元の方々に、迷惑を掛けないような採集マナーが必要だと感じています。
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