2001年秋の乙女鉱山の鉱物

2001年秋の乙女鉱山の鉱物

1.初めに

石友の高橋さんが、「京の澤のヂュモルチ石」の状況を知りたがっていたようなので、
下見を兼ねて出かけてみた。すると、鶏冠山林道のゲートが閉まり、通行できないため急遽
乙女鉱山に行くことにした。
乙女鉱山にしたのは、夏休みにみた、東京大学で開催している「和田鉱物標本展」の日本式双晶が
潜在意識にあったせいかも知れません。
乙女鉱山といえば、(1)日本式双晶 (2)ライン鉱など、日本を代表する鉱物が採集できた
事で、夙に有名です。
1年2ケ月ぶりの訪山でしたが、今も、日本式双晶を求めて、大勢の採集者が入り、
大々的に露頭を崩し、産地は大きく荒廃しつつあり、山の尾などと同様採集禁止に
なるのではと危惧しています。
(2001年9月採集)

2.産地

乙女鉱山に到るルートは次のどちらかです。
(1)黒平の集落から木賊峠に到る林道の途中から、水晶峠への登山道を約2時間歩く。
(2)大弛峠に到る林道から、乙女鉱山への道を約30分歩く。
(2)は、柳平の集落のゲートが 12月1日から翌年の5月31日まで、閉鎖されて
しまいますので、注意が必要です。
今回、妻も一緒なので(2)のコースをとりました。
乙女鉱山への緩やかな坂道を下って行くと、突き当たりに鉱山の廃屋が残っています。

3.産状と採集方法

乙女鉱山は、昇仙峡の上流、荒川を中心とした、馬蹄形の鉱体で、明治初年から、
昭和50年代まで、長年採掘していた。その結果、坑道、ズリも広範囲に広がっています。
ここでの採集は、ズリを掘るか、川岸や昔の坑道の壁を崩して晶洞を探すかの
いずれかになります。
@廃屋の先にあるズリ
 ここは、選鉱した石英のかけらが斜面が白くなるほど、落ちています。この中から、
水晶を探します。今回、平板で透明度の高い水晶を探した。
ここは、危なくなく、手軽に採集できますので、女性や子供向きです。
特に、雨上がりには、表面採集でもそこそこの標本が期待でき、クマ手などで、ちょっと
掘っても面白いでしょう。

乙女鉱山の廃屋とズリ
A崩落した坑道の露頭
露頭の石英脈を追いかけて、晶洞部分から水晶を採集する。頭の上には、数トンの石が
幾つもありますので、安全には、十分留意したい。

左:陥没した坑道    右:露頭を崩しての採集風景
B荒川岸の露頭
荒川川岸の花崗(閃緑?)岩の露頭には、点々と、晶洞があります。それらの
大きなものを掘り込んでガマの中から水晶を採集する。
ガマから出した水晶は、手が切れるようなシャープさで、ズリから採集したものとは、
まったく違い、露頭叩きで良品を採集すると、止められなくなるようです。

 左:採集前のガマ    右:採集中のガマ【タガネ19cm】

ガマから出したばかりの水晶【大 5cm】

4.産出鉱物

(1)水晶【Rock Crystal:SiO2】
ここの水晶は、大きなものもありますが、結晶形がシャープでなかったり、透明感がなく、
表面が汚いものになります。むしろ、小さいものに透明感があり、美しい結晶が多い。
また、水晶の表面に、鋭錐石の付いたものもありますから、表面を良く見る事が肝心です。
平板状がありましたので、ひょっとして日本式双晶があるかと探したのですが、これだけでした。
表面に鉄錆が付着しているのがありますが、きれいにしたい方は、「水晶のクリーニング」の
ページを参照してください。

左:平板水晶      中:柱状水晶      右:細長い水晶
(2)輝水鉛鉱【Molybdenite:MoS2】
石英塊や花崗岩の上に、六角の花びら状の結晶をしたものや、分離結晶などが採集できます。

花崗岩に花びらが点在するような輝水鉛鉱
(3)硫化鉱物
輝水鉛鉱以外にも、黄銅鉱や黄鉄鉱などの硫化鉱物も採集できます。

5.おわりに

(1)乙女鉱山には、日本式双晶を求めて、大勢の採集者が入っています。この日も、先客が5名
いましたが、これでも少ないとのことでした。
一部のグループが大々的に露頭を崩し、生の立ち木が根こそぎ川原に落とされていました。

乙女鉱山の露頭崩落
長野県のSさんが、これらの立ち木を黙々と片付けていましたが、産地は大きく荒廃しつつあり、
山の尾などと同様採集禁止になるのでは、と危惧しています。
(2)鉱山への道路脇には、リンドウが可憐な姿で咲いており、秋の訪れを感じさせてくれます。

乙女鉱山のリンドウ
(3)塩山に戻る途中、牧丘には、美人の湯と称する「鼓川温泉」「牧の湯」などがあり、
いずれも、アルカリ泉で、疲れをとって帰るのに最適です。
「牧の湯」は、料金も500円とリーズナブルで、露天風呂のほかにジェットバス、サウナ
などがあり、その上食堂や休憩室もあり、お奨めします。
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