最近の雨塚山の紫水晶

最近の雨塚山の紫水晶

1.初めに

宮城県白石市の雨塚山では、透明で自形結晶をした割合大きな
紫水晶が産出することで有名です。
ここは、故日下先生の「鉱物採集フィールドガイド」にも取り上げられ、綺麗な
紫水晶と言えば、雨塚山と決まっています。
最近「採れない」との声を聞きますので、最近の状況確認を兼ね、
ほぼ1年振りに訪れました。
ここは、何を目的に採掘したのか分かりませんでしたが、佐藤 典正著
「細倉鉱山史」によれば、古文書に、この近くにあったと思われる銀鉱山
として、上戸沢百貫銀山、小原村黒森銀山や七ケ宿普請山などの名前が
見え、銀や鉛を採掘(試掘?)掘したと考えられます。
今回は、坑道が発見できるなど、私にとっての謎が解明できた上に、
表面採集でも2〜3cmクラスを3本採集でき、産地は未だ健在です。
ただ、2,3年前のように6cmを超えるものは、難しくなっている
のは事実です。
(2001年5月採集)

2.産地

東北道「国見」インタでおり、小坂峠に向かって登って行く。峠を過ぎ、
上戸沢の集落を抜け、商店の脇から「わらび沢」に向かって山道を走る。
(「わらび沢」の看板のある所から入るのを忘れずに。」
橋を渡り、通行止めの左側の道に入り、しばらくすると、左側に「わらび堂」
がああります。更に進むと、道沿いの左側に、黄土色のズリが見える所が産地です。
ズリの上方には坑道があることに今回初めて気付きました。

左:雨塚山ズリ 右:坑道

川を挟んでズリの反対側にも鉱山跡のようなものがありますが、何も採れない
ようですので、間違わないように。

3.産状と採集方法

紫水晶は珪化した母岩の晶洞部分にあり、多くは分離結晶としてズリの
黄土色のベタ粘土の中に埋もれている。
最近では、分離結晶で良いものがでなくなったせいか、今まで見過ごされていた
母岩付きの採集に熱心な人も多く、「カン、カン」とハンマの音がする産地に
変わってきています。
透明で自形結晶をした紫水晶は、ズリをベンチカットで掘り込んで、土砂の
中から採集する。
ズリを堀込んで採集
手付かずのバージン・ズリを掘るのが良いのですが、探すのが困難なくらいに、
あちこち掘り込まれています。
土砂をバケツで運び出し、フルイ掛けすれば、小さな結晶も見逃すことがない。

4.産出鉱物

(1)紫水晶【Amethyst:SiO2】
紫水晶には、径の太い「太っちょ」と呼ぶものと、ホッソリ長い2つのタイプがあります。
ここでは、「水(ガス)入り」も珍しくありません。

左:母岩付き【写真準備中】 右:単晶 3cm
(2)氷長石【Aduiaria:KAlSi3O8】
母岩の空洞部分に、1cm以下の結晶が付いたものを採集した。
(3)水晶【Rock Crystal:SiO2】
晶洞の全面に小さな米水晶がついたものがある。時に、これが「仏頭状」になっているもの
もあり、1ケは標本に欲しい。
(4)硫化鉱物 ここでは、方鉛鉱(握り拳大を採集)、黄鉄鉱(1mm程度の微細結晶)、黄銅鉱
(三角だが錆びている)と2次鉱物の孔雀石が採集できます。
ベンガラと呼べる真っ赤な土状の赤鉄鉱もあります。

5.おわりに 

(1)最近、49er(掘ってもないなー)という声を聞きますが、表面採集でも
そこそこ採れる事が分かりました。
しかし、昔採集した良品を見せられてその気になってい行くと失望するでしょう。
(2)今回、O氏は、土砂を土嚢袋に入れて運び出し、近くの沢でフルイ掛けして、
3cm前後の透明結晶を何本か採集した。
ある本に、「近くに水を汲むところがないので・・・・・」を真に受けて
水の入った18リットルのポリタンクを背負って、エッチラ、オッチラ行った
という話を何人かから聞きました。
近く(約100m)に、沢も溜り水もありますので、水を運ぶ必要は全くありません。
(3)私のHPでは、このような、初心者(失礼!)にとって大事な情報を、
提供したいと思います。
ただし、産地までの道順は、産地保護の観点から地図をのせて詳細に説明する積もりは
ありません
inserted by FC2 system