2002年7月鉱物採集会-東海地方をたずねて-

2002年7月鉱物採集会-東海地方をたずねて-

1.初めに

私のHPを見て頂き、メールでの問い合わせがあったり、山梨、長野、茨城などの
産地を案内して差し上げた方々に声を掛け、2002年7月度の鉱物採集会を開催した。
従来は、私の住む山梨周辺での採集会であったが今回は、「東海地方をたずねて」と
銘打って27日から28日にかけ、岐阜県と愛知県で採集した。
日によって、メンバの入れ替わりがあったが、途中で飛び入り参加の中学生なども
含めて、両日とも子ども10名ほどを含めた20名前後で採集したので、1人では
出会い得ないような良品が採集できた。
・福岡鉱山では、3cm近い緑柱石
・関戸川では5cmのトパーズ、ブルートパーズ
・中宇利鉱山の中宇利石針状結晶
・田口鉱山では2cmのパイマン
・津具鉱山の放射状輝安鉱
などなどで、参加者の皆さん大満足でした。
何よりも、炎天下、子ども達が全身汗だらけ、鼻の頭に玉の汗を浮かべて熱心に採集し
「これは、何と言う鉱物ですか」と勉強する姿勢に、日本の将来に希望が持てるように
なりました。
(2002年7月採集)

2. 7月27日蛭川・中津川での採集

我々千葉・山梨組は、千葉のTさん、Yさん親子と朝5時過ぎに甲府昭和ICで合流し
私の車に移って、中央道に乗る。途中、駒ヶ岳SAで、朝食。図らずも、Tさんも私も
「きしめん」を注文。いつものうどん、そばと違った食文化圏に迷い込んだ感じ。
8時前に、集合地点の恵那ICに到着。兵庫県のNさんは、奥さんと次女のNさんが
残念ながら参加できず、長女のIさんと長男のA君が初参加。
奈良県のAさんは、後に田口鉱山で大活躍する息子のT君と参加。
愛知県のKさんは、息子のS君と参加。Kさんは、産地案内で参加。常連になりつつある
Hさんは、豊橋から参加。
兵庫県の医学生T君が集合時間になっても現れない。T君のことだからそのうち来るだろう
としばらく待つと、軽自動車で登場。これで全員揃う。

【蛭川村採石場】
「博石館」周辺の採石場での採集を計画していたが、最近稼動している採石場が少なく
立ち入り禁止が多いため、断念。

【福岡鉱山】
ズリに到着すると、既に中学生が2人、ズリを舐めるようにして採集。mm単位の
緑柱石を数本採集。
中学生たちは、知多から朝5時の電車に乗り、バスで来たとのこと。さらに、前回来て
何も採れなかったが、今回リベンジを果たしたと満足げであった。
A県の歯科医師Yさんと私の下見情報を総合し、上段、中段のズリをフルイかけ。

左:Nさん親子【Iさんがゲット】 右:Kさん親子【出演した今夜のTV放映が気になり・・・・・・】
やがて、Tさんが「中川さん、あったよ」と一言。見れば、3cm近い緑色、透明の良品。
ベテランのKさんによれば、最盛期でさえ、こんな美晶は少なかったとのこと。
結局、採れたのはT君の母岩付きを含め2人で1ケ位と、難しい産地。それだけに、Tさんのは
価値ある1本です。他に、鉄マンガン重石少々。

左:母岩付緑柱石       右:鉄マンガン重石

【関戸川】
知多の中学生も乗せて、関戸川に向かう。日陰で昼食の後、2グループに分かれて採集。
私の下見した場所で採集し始めすぐ、「こんなの何ですかね」とNさんが差し出したのは
長径5cmはあろうかという、トパーズでズシリと重い。
全員、これに気を良くして、掘り進む。やがて、豊橋のHさんが、触像はあるが大きな緑柱石を採集。
更に、A君が透明で輝きの強い美晶を採集。「これで彼女へのプレゼントは確保したね」と
私が水を向けると、父親のNさん「1つでは、あかん。次のも準備しておかんと。」
左:Nさん親子    中:豊橋のHさん【ベリルを採り余裕】 右:A君【彼女へのプレゼントは確保】
医学生のT君と千葉のTさんがコンビを組み、T君が土砂を掘り運び、Tさんがフルイかけ。
他のメンバの歓声を他所に一向に盛り上がらない。ドブ長に身を包んだT君、医学生だけあり
徐々に産地(患者?)の脈を捉え水晶が出始め、一つのフルイから3ケでて、やがて透明な
美晶を採集。
TTコンビ
知多から来た中学生も思いもかけず関戸川までこれ、おまけに頭付きを採集し大満足の様子。
Yさん親子もタイムアップ寸前に、息子のY君が猛烈に追い上げ。
Yさん親子
今回、青みを帯びた”ブルートパーズ”をIさんや私が採集しました。
ブルートパーズ【緑柱石と共生】
16時前に切り上げ、恵那ICで解散する。知多の中学生は、尾張旭のKさん親子が名古屋近くの
JR駅まで送り届けてくれることになった。
中津川宿泊グループは、ビジネスホテルに投宿。街中での夕食の後、Nさん親子の部屋に集まり
恒例の採集品を交換する「標本玉手箱」のあと、豊橋のHさんの奥さんが差し入れてくれた地酒
(日本酒、焼酎)をこれまた奥さんの手作りの漬物やつまみで頂き、鉱物談義に華を咲かせた。
人によっては、朝2時に起きてきた人もあり、採集の疲れとお酒の酔いで早めにZ Z Z。

2. 7月28日新城・奥三河での採集

中津川宿泊組は、田口直行組と豊川IC集合組に分かれて朝6時に出発。中津川ICから
中央道に乗り、東名上郷SAでバイキング朝食。8時ジャストに豊川IC着。
静岡県から初参加のMさん一家と案内してくれる豊川のHさんが出迎えてくれ、Hさんの
誘導で中宇利鉱山に向かう。
中宇利鉱山では、静岡県の歯科医師Yさんが息子のY君、S君と友達のO君とで出迎えてくれた。

【中宇利鉱山】
中宇利石の露頭前で、中宇利石、アルチニ石、ブロシアン銅鉱などを採集し、坑道前に移動。
坑道からの冷気とズリを吹き上げる爽やかな風に吹かれてしばし休憩しながら、坑口前のズリで
中宇利石とコバルトペントランド鉱を採集。Y君が、放射状で真っ青な中宇利石の針状結晶が
ビッシリ付いた良品を採集。石綿などもあります。
コバルトペントランド鉱は、ルーペサイズなので今ひとつ人気が・・・・・。
中宇利鉱山坑道前

左:中宇利石針状結晶       右:石綿

【黄柳野霰石】
採石場で確保しておいた霰石の付いた大塊は健在で、小中学生の手をとり採集要領を体験して
もらう。一部ヒスイ輝石と間違う透輝石があり、小中学生では、歯が立たず大人が手助け。
それぞれ標本を確保。まだ、次の人の分も充分に残っています。
黄柳野採集

【棚山オパール】
棚山から流れる海老川の支流の河原で、昼食を兼ね、オパール探し。ノーブルは無理でしたが
脈(玉)状の青白いオパールは確実に全員採集できました。A君の採集したものは、球果状の
立派なもので、脱水を防ぐためジャム等の空瓶に水を入れ密閉保管すると良いでしょう。
オパール【松脂岩中の青白い脈】
さらに、緑石英(緑玉髄)、瑪瑙、赤玉の入ったブラッドストーンなどを採集した人もいます。
川べりには、「この堰堤で採集できる石」の看板が最近立てられ、オパールが採れるとなって
います。
オパール産地

【田口鉱山】
本日のメインイベントの田口鉱山に向かう。林道の入口で、奈良県のAさん親子と合流。
林道の駐車場には、先客が2台あり、溢れるばかりの車。
(平日は林道工事のミキサー車などが駐車するので駐車できる台数は限られます。)
ズリ組と坑内組に分かれて採集開始。坑内には、斜坑部分にロープを張り、まず安全確保。
坑内は吐く息が白くなるほどの涼しさ。下見で探しておいたパイマンの脈に挑戦。
坑内での採集【ピンク色がパイマンの脈】
しかし、9ポンド(4.5kg)ハンマの柄が折れ、太いタガネの先が折れるなど
固いマンガン鉱に阻まれ坑内の表面採集に変更。Hさんが綺麗なバラ輝石の中にパイマンのある
大きな塊を探し出し、K君のリュックに入れる。1時間ほどで、中学生のAさんや小学生のK君が
寒くなり、引き上げるのを潮に坑内組は撤退。
坑道からうだるようなズリに戻ると衝撃的な事実が待っていた。Aさんの息子のT君が、ズリで
2cm近いパイマンを発見したとのこと。見せてもらうと、結晶面がきっちり見え、下見で
私の妻が見つけた19mmのパイマンがかすむほどの美晶。

左:ズリで探す小中学生【手前がK君】  右:パイマン美晶
それからは、全員ズリに集中し、時ならぬパイマン・ラッシュの様相を呈した。
パイマン・ラッシュ
10年前には、このズリは、たいしたものが採れないというのが”定説”になっていましたが
先入観のないT君がひたむきに探したお手柄です。ズリ石の表面の酸化が進み、風化に強い
パイマンや満バン柘榴石が浮き出て見やすくなっていることも探しやすくなっている理由です。
私も、パイマンと見間違うルビー色で透明感のある満バン柘榴石を見つけました。
満バン柘榴石

【津具鉱山】
前回の下見で、山道から下流側は期待できず、上流側の沢で採集を開始するが、夕立が近いのか
時間の割りにどんよりと暗く、採集には最悪のコンディション。
輝安鉱を狙うが、母岩の様子がわからず、苦戦する。ズリの石をひたすら割り、ようやくO君が
母岩に針状に入った輝安鉱を発見。しかし、後が続かない。
引き上げる寸前にYさんが、放射状の輝安鉱を発見。関戸川以来、ラスト数分に強いYさんでした。
津具鉱山放射状輝安鉱【採集・写真ともYさん】
最後まで面倒見ていただいた、豊橋のHさんと歯科医師のYさんにお礼をして、帰途に着いた。
途中、「ひまわりの湯」で汗を流し、飯田ICから中央道に乗り、甲府昭和ICに9時帰着。
中央道の上りは30kmの渋滞で、千葉のYさんが帰宅したのは、午前1時だったが
採集品が良かったので、疲れを感じなかったとの嬉しいメールを頂いた。

5.おわりに

(1)今回、初めて岐阜県、愛知県での採集会を開催し、地元愛知のKさん、豊橋のHさん
歯科医師のYさんのお蔭で、産地の代表的な標本を皆さん採集でき、大満足でした。
この場をお借りして、厚く御礼いたします。
(2)私にとって、ピーク時30名近いメンバの採集で、安全確保が一番気がかりでしたが
参加していただいた皆様の自覚の高さもあり、無事故で解散できたのが何よりの収穫でした。
(3)炎天下にもかかわらず、小中学生が、熱心にハンマを振るう姿は、一服の清涼剤でした。
一人でも多くの皆さんと次回の採集会でまたお会いできるのを楽しみにしています。

6.参考文献

1)加藤昭、松原聡、野村松光共著:鉱物採集の旅-東海地方をたずねて-,築地書館,1982年
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